関税や環境規制をテーマに議論、米ニューヨークで開催の自動車フォーラム

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月01日

米国ニューヨーク市マンハッタンのジャビッツセンターで4月18~27日、ニューヨーク国際オートショー(NYIAS)が開催された。それに先立って、NYIAS、自動車販売店の業界団体の全米自動車ディーラー協会(NADA)、米市場調査会社JDパワーの共催で同月15日、自動車業界関係者が一堂に会する年次会議「オートフォーラム・ニューヨーク」が開催された。会議では17のセッションに33人のスピーカーが登壇し、トランプ政権による自動車関税の影響や、環境規制などの見通しについて議論が行われた。

JDパワーのデータ分析部門代表のトーマス・キング氏は、1962年通商拡大法232条に基づく完成車や自動車部品への追加関税の影響に関し(2025年4月3日記事参照)、平均車両価格が1台当たり4,782ドル上昇すると試算している。ただし、「ブランド間で影響に大きな開きがある。関税分の価格転嫁により車両価格を15%上げれば、販売台数は25~50%減少する可能性があり、関税コストが高いブランドほど、価格戦略を慎重に調整する必要がある」と分析した。また、NADAのチーフエコノミストのパトリック・マンジー氏は「関税による部品価格の高騰により、車両価格だけではなく、修理費用や保険料も上昇し、消費者の負担はさらに増す」と指摘した。

2025年第1四半期(1~3月)の新車販売台数は前年同期比4.0%増と好調で、特に3月は追加関税発動前の駆け込み需要もあって、前年同月比9.7%増加した(2025年4月10日記事参照、注1)。2025年の見通しに関し、キング氏は、第2四半期(4~6月)前半は関税前在庫の販売が中心となり、本格的な価格変動は6月以降になると予測し、第3四半期(7〜9月)には在庫が関税適用品に切り替わって、各社の価格戦略が徐々に明らかになるとの見通しを示した。さらに、第4四半期(10〜12月)には「メーカー各社が関税適用後の市場動向を踏まえて、価格設定や車種構成、供給拠点の見直しといった長期戦略を本格的に再構築し始める」と述べた。

また、主要自動車メーカーで構成する米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は、バイデン前政権下で強化された環境規制の見直しと、カリフォルニア州が主導するクリーンビークル(CV、注2)の販売義務を含むアドバンスド・クリーンカーII(ACCII)の見直しを政府に求めるよう、参加者らに呼びかけた(2025年2月19日記事参照)。ACCIIは一部の州で2026年モデル(通常、2025年後半から販売されるモデル)から、州内で販売する車両の35%をCVにすることを義務付けているが、いずれの州も達成が不可能なことがほぼ明らかとなっている。未達成の場合は最終的に1台当たり2万ドルの罰金が科されることから、早急な対応が求められている。

(注1)モーターインテリジェンス発表。一部メーカーは月次販売台数を発表していないため、推定値。

(注2)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(大原典子)

(米国)

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