米税関、世界共通関税のガイダンス発表

(米国、世界)

ニューヨーク発

2025年04月07日

米国税関・国境警備局(CBP)は4月4日、世界共通関税に関するガイダンスを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。このうち、世界共通関税の対象外となる猶予期間について、新たな期限を示した。また、日本企業からは、今回の発表を受けて、関税率の計算方法に関する問い合わせが相次いでいる。

ドナルド・トランプ大統領は4月2日、全ての国から輸入される全ての品目に10%の追加関税を課す世界共通関税と、米国の貿易赤字額が大きい国により高い追加関税を課す相互関税を発表した(2025年4月3日記事参照)。世界共通関税は米東部時間4月5日午前0時1分から(注1)、相互関税は4月9日午前0時1分から通関した貨物に対して課す。ただし、関税賦課の猶予期間を設けており、世界共通関税では4月5日午前0時1分より前に、相互関税については4月9日午前0時1分より前に船積みされている場合、対象外となる。

大統領令が発表された時点で、これらの関税を猶予する条件には、船積み日時のみを指定していた。だが、今回、CBPが発表したガイダンスでは、世界共通関税の適用対象外となるためには、5月27日午前0時1分より前に通関する必要があることを示した。日本から4月5日直前に船便で出荷された貨物は、ロサンゼルス港やロングビーチ港など米国西海岸向けならば、5月27日の期限に間に合うとみられるが、ニューヨーク港など東海岸向けは、西海岸向けよりも日数がかかるため、留意が必要となる。なお、今回のガイダンスでは、世界共通関税についてのみ期限を示しており、相互関税の適用猶予期間に関する通関期限は、今後のガイダンスであらためて示すとみられる。

今回発表された関税に関しては、払い戻し(ドローバック)が認められていることも示した。トランプ政権がこれまで発表した追加関税措置では、ドローバックを認めないことが1つの特徴だった(注2)。

世界共通関税、相互関税については、その規模や範囲の大きさから、多くの相談がジェトロに寄せられている。例えば、関税率の計算方法に関する質問が多い。今回の新たな関税賦課を受け、米国に輸入される品目に対する関税率は、最恵国(MFN)税に、世界共通関税ないしは相互関税(世界共通関税と相互関税の足し算ではない)、それ以外の追加関税(注3)などの合計になる。従って、中国原産品に対しては、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税や、1974年通商法301条に基づく追加関税も賦課されることになる。ただし、カナダとメキシコに対しては、IEEPAに基づく追加関税が課されている限り、世界共通関税・相互関税の対象外となっている。なお、世界共通関税と相互関税は、輸出国ではなく、製品の原産国に対して課すとみられる。原産性の判定は、非特恵原産地規則に基づき、実質的な変更(Substantial Transformation)が行われた国に基づいて行うとみられる(注4)。また、自由貿易協定(FTA)の対象品目の輸入に対しては、特恵税率に加えて、世界共通関税または相互関税が賦課される。

(注1)本稿の日時は全て米国東部時間に基づく。

(注2)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく、メキシコ、カナダ、中国に対する追加関税(2025年2月4日記事参照)、1962年通商拡大法に基づく鉄鋼・アルミニウム製品(2025年3月12日記事参照)、自動車・同部品(2025年4月3日記事参照)に対する追加関税では、ドローバックは認められていない。

(注3)232条に基づいて追加関税の対象となっている鉄鋼・アルミ製品、自動車・同部品の品目は、世界共通関税・相互関税の対象外。

(注4)非特恵の原産地規則については、商務省国際貿易局(ITA)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(赤平大寿)

(米国、世界)

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