中国、米関税受け民営企業や米国企業との座談会を相次ぎ実施、さらなる追加関税には対抗措置を取ると表明
(中国、米国)
調査部中国北アジア課
2025年04月09日
米国の「相互関税」賦課が現地時間4月9日から実施された。中国には34%の相互関税が新たに賦課されることになっていたが(注1)、報道によると、ホワイトハウスのレビット報道官は、4月9日から中国原産品に対してさらに50%上乗せし、計104%を賦課するとの声明を発表している(「FOX Business」4月8日)。中国商務部は4月8日、米国がもし関税をさらに引き上げるのであれば、中国は対抗措置を取ると表明した(注2)。
中国政府は企業との座談会を相次いで開催し、意見や要望を聴取している。商務部は4月6日、在中の米国企業との円卓会議を開催し、テスラ、GEヘルスケア、メドトロニック(注3)など20社余りの米国企業代表が出席した。会議を主催した商務部の凌激副部長は、中国の外資誘致政策に変化はなく、従来と変わらず米国企業を含む外資系企業の合法的権益を守り、外資系企業の課題・要望を進んで解決するとした。また、関税問題の根源は米国にあると指摘し、米国企業に対し、理性的に声を上げ、実際の行動によってグローバルの産業・サプライチェーンの安定を守るよう求めた。
国家発展改革委員会は4月8日、民営企業との座談会を開催し、米国の追加関税への各社の対応と建議、貿易や雇用の安定化に向けた意見などを聴取した。トリナ・ソーラー(天合光能、太陽光パネル大手)、浙江中基寧波(貿易などサービス業)、広東領益智造(Lingyi iTech)、山東歌爾(GoerTek)、滴滴出行(DiDi、配車サービス大手)の5社が出席した(注4)。会議を主催した同委員会の鄭柵潔主任は、米国の追加関税などの外部のリスク・チャレンジに直面する中、中国は国内の発展の確実性をもって外部環境の不確実性に対応しなければならないと述べた。
金融市場安定維持へ国有企業、政府系ファンド、基金を総動員
金融面では、市場の安定化へ向けて取り組む姿勢を示している。4月7日には政府系投資会社の中央匯金投資がETFの買い入れ増額を表明したほか、中国人民銀行(中央銀行)は8日、同社の動きを支持し、必要に応じて同社への再貸し出しを行い、資本市場の安定を断固維持するとの声明を発表した。国有企業を監督する国務院国有資産監督管理委員会は同日、国有中央企業およびその上場持ち株企業が主体的に株の買い増しや買い戻しを行うことを全力で支持するとした。全国社会保障基金が株の買い増し、継続保有を表明した(「財聯社」4月8日)ほか、多くの国有企業が株の買い増し、買い戻しを表明し、株式市場の下支えを図っている。このほか、国家金融監督管理総局は4月8日、一部の保険会社について株式配分比率の上限を約5%引き上げる旨の通知を発表している。
(注1)中国には香港・マカオを含む。なお、既に米国は中国原産の全輸入品目に対して計20%の追加関税を賦課している(2025年3月4日記事参照)。
(注2)中国は4月4日、米国が対中追加関税(34%)を発表したことを受け、4月10日午前0時1分から米国原産の全輸入品に対し34%の追加関税を賦課すると発表している(2025年4月7日記事参照)。なお、中国は4月4日に各種の措置を発表している(2025年4月7日記事参照)。
(注3)同社の本社はアイルランドだが、オペレーション本部は米国に所在する(2025年3月26日記事参照)。
(注4)広東領益智造(Lingyi iTech)、山東歌爾(GoerTek)の2社は米アップルの中国におけるサプライヤー(2024年12月10日記事参照)。
(小宮昇平)
(中国、米国)
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