中国の習国家主席がベトナム訪問、多角的貿易体制の維持に合意

(ベトナム、中国)

ハノイ発

2025年04月18日

中国の習近平国家主席は、ベトナムのトー・ラム書記長およびルオン・クオン国家主席の招待を受け、4月14~15日にベトナムの首都ハノイ市を訪問した。国家主席としての習氏のベトナム訪問は、前回2023年12月以来の4度目となる(2023年12月20日記事2024年1月4日記事参照)。今回のベトナム訪問は、カンボジア、マレーシアへの訪問と合わせて3月から調整されていた。米国の関税政策に対抗し、ASEANとの関係を深める目的とみられる。

習氏は滞在中、ベトナム共産党の指導部4役(書記長、国家主席、首相、国会議長)と面談した。両国は40を超える覚書に署名し、共同声明を発表した。覚書の具体的なリストは公表されていないが、政府公式サイトによると、鉄道・道路輸送分野では、中国からハノイ市や港湾都市ハイフォン市に乗り入れる標準軌鉄道に関する中国の技術支援や、国境ゲートの開発などに関し、7つの合意文書を締結した。鉄道の建設資金は中国が融資を行う予定だ。人工知能(AI)や半導体、原子力などの科学技術や農業、気候変動対策、教育など、さまざまな分野での連携も推進することで一致した。

米国の関税政策をめぐる両国の対応について、具体的な協議の有無は報じられていないが、共同声明では、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定とASEAN・中国自由貿易地域(ACFTA)の活用なども推進し、非差別的で多角的な貿易体制を維持し、経済のグローバル化を促進することが記載された。

米国のドナルド・トランプ大統領は同14日、今回のベトナムと中国の会談について、両国を非難しないとしながらも、米国に損害を与える戦略を考案するためのものという見解を示した(「フォーチュン」誌4月15日)。

ベトナムにとって、中国と米国は貿易額で高い割合を占めており、両国と切り離せない経済関係を持つ。そのため、双方とのバランスに留意し、かじ取りする様子がうかがえる。46%の相互関税を課した米国に対しては、報復措置の考えを示さず、2国間貿易協定の交渉を進める方針だ。一方、米国からは中国製品の迂回輸出などを含め、ベトナムの非関税障壁が問題視されている(2025年4月14日記事参照)。

中国との貿易では、安価な中国製品の国内への流入を警戒した対応も講じている。2025年2月には低価格輸入品の免税を廃止し(2025年3月4日記事参照)、中国を原産地とする熱延コイル(HRC)に対しアンチダンピング税を適用した。

(萩原遼太朗)

(ベトナム、中国)

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