4月の米地区連銀報告、BtoB取引を中心に関税コストの転嫁が始まる
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月24日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は4月23日、2025年4月の地区連銀経済報告(ベージュブック)を発表した。2025年2月25日~4月14日のデータに基づく。全体概況は、「前回からほとんど変化しなかった」としたが、「通商政策をめぐる不確実性は全体に広がっている」と指摘した。また、関税引き上げの影響により、見通しについても「いくつかの地区では大幅に悪化した」とした。
分野別では、消費は「自動車以外の消費については、全体的に減少した」一方、「自動車や耐久財に関しては、関税引き上げ前の駆け込み需要により緩やかに増加した」としており、3月の小売統計(2025年4月18日記事参照)で見られた内容とおおむね一致するものとなっている。また、サービス関連では、旅行需要の減少を報告しており、このところのレジャー関連の需要鈍化を示唆する指標(2025年4月11日記事参照)と整合的な内容だ。製造業に関しては、「まちまちながら、3分の2の地区では活動がほとんど変化なし、または減少した」とした。
労働市場に関しては、「雇用者数は1地区で控えめに増加、4地区でわずかに増加、4地区でほとんど変化なし、3地区でわずかに減少」とし、前回報告からわずかに下方修正された。政府効率化省(DOGE)により政府関連の雇用が減少したことに加え、主にBtoC取引(消費者との取引)向けの企業が採用を抑制しているもようだ。大規模なレイオフは報告されておらず、現時点では従前同様に採用抑制で対応しているとの報告が多いものの、いくつかの地区連銀からは、中小企業や派遣労働者を中心に徐々にレイオフなどが実施されているとの報告もなされはじめている。消費者の需要や価格転嫁の度合いによってはレイオフが増えはじめる可能性もあり、今後半年程度は警戒が必要だ。
価格については、6地区で控えめなペースで上昇、ほか6地区で緩やかに上昇としており、全地区で物価上昇が報告された。「多くの企業はサプライヤーからコスト上昇の通知がなされている」「関税サーチャージの追加や価格設定期間の短縮などが報告されている」などと指摘しており、特にBtoB取引(企業間取引)でのコスト上昇が顕著に表れはじめているもようだ。品目別では、中国から輸入される原材料や、建材などに使われる鉄鋼・アルミニウム、機械類、食料品などについては複数の地区から価格上昇が報告されており、現時点では主に3月に発動された関税引き上げ措置が影響しているもようだ。今後は4月5日に発動された一律10%のベースライン関税などの影響も徐々に顕在化してくる可能性がある。
もっとも、今回の報告書では、BtoC向けの企業では需要が低迷しているため、コストの十分な転嫁に踏み切れない企業も出てきていることが報告されている。サプライヤーに対し関税引き上げに伴う納入価格の上昇を受け入れない姿勢を示している企業がみられるほか、一定の期間、通常よりも割引価格で飲食を提供するレストランウィークへの参加を取りやめる飲食店や、市場シェアを維持するためにコスト増を吸収する方策を検討する企業も報告されており、トランプ政権の追加関税措置が企業活動に影響を与えはじめているようだ。
(加藤翔一)
(米国)
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