3月の米小売売上高は前月比1.4%増、トランプ関税による駆け込み消費が寄与

(米国)

ニューヨーク発

2025年04月18日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4月16日付)によると、3月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.4%増の7,349億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(1.4%増)と一致した。トランプ政権の関税政策の影響でインフレが再燃することへの懸念が広まり、あらゆる業種で消費者の駆け込み需要が高まったことが示された。なお、2月は同0.2%増(速報値、2025年3月18日記事参照)から修正されなかった。

自動車・同部品が押し上げ要因に

業種別にみると、最も押し上げに寄与したのが自動車・同部品で前月比5.3%増の1,439億ドル(寄与度:プラス1.00ポイント)だった。ドナルド・トランプ大統領が発表した自動車関税(2025年4月3日記事参照)に対する懸念で、値上がり前に消費者の駆け込み需要が進んだとみられる。前月に大きく落ち込んだフードサービスはプラスに転じた(前月比1.8%増)ほか、建材・園芸用品は3.3%増の414億ドルとなった。全体的な伸びは幅広く、スポーツ・娯楽品や家電など、関税の導入で値上がりが予想される商品を扱う分野も増加に寄与した。一方、燃料価格の低下が寄与し、ガソリンスタンド(2.5%減、2025年4月11日記事参照)は減少した。

全米小売業協会のマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「3月の増加は、関税を先取りするための買いだめが一因となった。経済見通しが不透明で状況が流動的なため、消費者心理は弱まり、多くの消費者が可処分所得を貯蓄に回している」と述べた。また、米コメリカ銀行のチーフ・エコノミスト、ビル・アダムス氏は「消費者心理が冷え込む中で、自動車のパニック買いが起きた状況に良い感触を持つことは難しい」とし、「ほぼ毎日のように、(トランプ政権の)関税政策に大きな変更があり、経済見通しは流動的だ。自動車、電化製品、電子機器を販売する企業は、パニック買いが終息するにつれ、今後1、2カ月は需要が減少する可能性が高い」との見方を示した(ロイター4月16日)。

消費者マインドは引き続き悪化しており、民間調査会社コンファレンスボードが3月25日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした3月の消費者信頼感指数は92.9(2月:100.1)と4カ月連続の低下となり、2021年1月(88.9)以来の低水準となった。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は134.5(2月:138.1)と前月から3.6ポイント低下した。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は65.2(2月:74.8)と9.6ポイント低下して、過去12年間で最低水準となり、景気後退を示唆する基準値の80を大きく下回った(添付資料図参照)。

同社のグローバル指標担当シニアエコノミスト、ステファニー・ギチャード氏は、「消費者の期待は特に暗く、将来の景況感に対する悲観論は深まり、将来の雇用見通しに対する信頼感は12年ぶりの低水準に落ち込んだ」とした。「一方、過去数カ月間堅調に推移していた将来の収入に対する消費者の楽観的な見方はほぼ消失しており、経済と労働市場への懸念が、消費者の個人的な状況判断にも波及し始めている」と指摘した。

(樫葉さくら)

(米国)

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