ドイツ連立協定、自動車産業の重要性強調
(ドイツ)
ミュンヘン発
2025年04月14日
ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は4月9日に連立交渉に合意した(2025年4月11日記事参照)。各党が公表した連立協定書(ドイツ語)によると、自動車産業については、自動車立国として国内の生産と雇用の維持に取り組む、そのために自動車動力源の変革期にある中で複数の動力技術の可能性を追求していく、とした。また、EUによる大型商用車の二酸化炭素(CO2)排出目標は見直しが必要、商用車の電動化には基本賛成するが、電動車の保有割合を法律で一律に定めることには反対の立場を示した。
具体的な政策としては、次の点が挙げられている。
- 電気自動車(EV)を社用車として使用する際に税制優遇の対象となる自動車の金額上限を10万ユーロに引き上げ
- 電気自動車の特別減価償却期間の設定
- 電気自動車の自動車税を2035年まで免除
- EU社会気候基金を活用し、中・低所得家庭の環境配慮車への買い替え支援
- プラグインハイブリッド車(PHEV)とレンジエクステンダーEV(EREV、注)の促進とEUレベルでの法規制
- 全国での需要に応じたユーザーフレンドリーの充電設備、乗用車および商用車用の急速充電設備の設置拡大とそのための予算確保
- ゼロエミッショントラックの有料道路の通行料を2026年以降も免除
- 社用車向けの水素充填(じゅうてん)設備の設置促進
また、自動車と鉄鋼産業は大きな構造的課題を抱えている一方、防衛産業は急速かつ大規模な成長が必要なことから、政府としてどのように防衛産業のニーズに沿って既存の鉄鋼や自動車関連工場の改修を支援できるか検討する、とした。2023年12月に終了した新車購入時の補助金(2023年12月15日記事参照)は政策には含まれていない。
ドイツ自動車産業連合会(VDA)のヒルデガルド・ミュラー会長は、連立協定がまとまったことや電気自動車に対する政策に一定の評価を示した。他方で、充電施設や水素充填施設の拡充については具体化する必要があり、中・低所得家庭への支援プログラムも早急に説明をしないと買い替えの意思決定のタイミングが遅れるなどと注文をつけた(プレスリリース)。
(注)航続距離を延長する目的で小型発電機を搭載した電気自動車。
(鷲澤純)
(ドイツ)
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