米国からスリランカへの相互関税により、衣料品やゴム製品輸出に懸念

(スリランカ、米国)

コロンボ発

2025年04月07日

米国のドナルド・トランプ大統領は4月2日、米国の貿易赤字額が大きい国・地域に対して、米国時間4月9日から「相互関税」を課すと発表した(2025年4月3日記事参照)。

スリランカはミャンマーと並び、全世界で6番目に高い44%の関税が課されることになった。高関税の背景には、米国がスリランカに対して貿易赤字を抱えている上、スリランカが輸入品に対する関税に加えて、物品税(Excise Duty)や輸入税(CESS)、付加価値税(VAT)、港湾・空港開発税(PAL)などを課していることが問題視されたとみられる(スリランカの関税制度参照)。なお、米国通商代表部(USTR)によると、2024年の米国のスリランカへの財輸出額は3億6,820万ドル、スリランカからの財輸入額は30億ドルで、米国の貿易赤字額は約26億ドルだった。

スリランカ輸出開発局(EDB)によると、スリランカにとって米国は、国・地域別の財の輸出額全体の22.9%を占める最大の輸出先で、今回の関税措置は大きな打撃が予想される(2025年2月3日記事参照)。米国向けの輸出額では、衣料品(HSコード:61類、62類)が64.4%、ゴム製品(HSコード:40類)が11.4%を占めており、高関税に伴う競合国との競争劣位や消費の減退などによる両業界への悪影響が懸念される。

スリランカ政府は今後、相互関税への対応策を検討することになる。アヌラ・クマーラ・ディサーナーヤカ大統領は4月3日、米国の関税政策に関する委員会を設置し、政府高官のほか、衣料品やゴム製品の業界関係者らを委員に任命した。

現地シンクタンクの政策研究所(Institute of Policy Studies of Sri Lanka)のリサーチフェロー、アサンカ・ウィジェーシンハ氏は、ジェトロが3月20日に実施したヒアリング調査に対して、「仮に相互関税がスリランカに適用された場合、スリランカ企業は関税分を必要経費として自社で負担する一方で、生産全体にかかるコストの削減に取り組むことになるだろう。また、新規市場の開拓による輸出先の多角化なども対応策となる。他方、スリランカ政府としては、2022年の経済危機から十分に回復していない点を米国政府に訴えることや、米国産原油の輸入拡大などが選択肢となるだろう」と話した。

(大井裕貴)

(スリランカ、米国)