欧州産業界、大型車用の充電インフラ拡充に向け、送電網強化策を提言
(EU)
ブリュッセル発
2025年04月17日
欧州自動車工業会(ACEA)と欧州電気事業者連盟(EURELECTRIC)は4月15日、大型車の充電インフラ整備に関し、EUと加盟国に対する提言書を発表した(プレスリリース
)。
EUでは、2030年から大型車の二酸化炭素(CO2)排出基準が段階的に厳格化される(2024年1月25日記事参照)。2団体は、基準順守にはゼロエミッション車(ZEV)のトラックの走行台数を2030年時点で約30万~40万台にする必要があると指摘する。同時に、大型車に適した充電インフラ整備が必須だが、送電網の整備や新規事業の認可の遅れ、さらに、複雑な規制が要因となり、遅滞している。
整備拡充には、運送事業者の駐車場での整備に加え、加盟国が代替燃料インフラ規則(2023年8月2日記事参照)に基づき、汎(はん)欧州運輸ネットワーク(TEN-T)上などで、公設設備の設置を遅滞なく進める必要がある。送電網の強化も重要だ。大型車用のインフラ拡充に特化した規制枠組みを策定し、配電事業者などに対する規制緩和が必要としている。提言書の主な内容は次のとおり。
- 送電網の改修促進に向け、主要なTEN-Tや都市結節点、駐車場などでの大型車の電力需要予測に基づき、先行投資を行う権限を配電事業者に与える。
- スマートチャージなど、事業者のニーズに合う電力供給に焦点を当てる。高出力のメガワット充電システム(MCS)の展開促進や、エネルギー課税指令を改正し(2023年8月2日記事参照)、化石燃料への補助金を削減し、代替エネルギーとして電力の価格競争力を高める。
- 使用可能な電力量について、アクセスが容易なオンラインマップを作成し、事業者のZEV購入や充電設備の設置に向けた投資決定を支援する。
- 需要が不確かな状態で配電事業者が過剰に参入することを防ぎ、かつ、事業者が経済情勢に合わせた投資判断を行い、柔軟な価格設定が可能な仕組みを策定する。
- 変圧器や銅、アルミニウムといった重要材料や部品のサプライチェーンの強靭(じん)化、公共調達プロセスの期間の短縮、効率化に取り組む。
- 自動車メーカーや電力事業者など関係者間の送電網整備に係るデータ交換の調整を進める。許認可申請のデジタル化と、申請に関連する基準をEUレベルで統一する。
- 加盟国当局は、配電事業者が参照可能な送電網への接続にかかる優先基準や手続きを定める指針を策定する。また、2025年第3四半期(7~9月)に発表予定の「欧州クリーン輸送回廊イニシアチブ」(2025年3月13日記事添付資料参照)で、大型車用インフラを「重要インフラ」に分類し、事業計画や認可を優先的に進める。
(滝澤祥子)
(EU)
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