EU、大型車のCO2排出基準規則の改正案に政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2024年01月25日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は1月18日、欧州委員会が2023年2月に発表した大型車の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案(2023年2月16日記事参照)について、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。大型車からの温室効果ガス(GHG)排出はEU道路輸送部門の25%以上を占めており、2030年以降について新たなCO2排出削減目標を設定し一層の削減を目指す。今後、両機関による正式な採択を経て施行される見込み。なお、現時点で今回合意した法文案は公開されていない。

同改正案は、現行規則の対象である中・大型トラック(車両総重量7.5トン以上)に、小型トラック(同5トン以上)、バス、被牽引自動車などを追加。欧州議会案に沿い、ごみ収集車や生コンクリートを運ぶミキサー車なども2035年以降、対象になる。また、欧州議会が「コストおよび資源面で効率的なゼロエミッション車への移行を加速できる」とした内燃機関搭載車をゼロエミッション車に改造した車両について、欧州委は2025年までに、承認のための調和されたルールによる市場への導入促進の必要性を評価する。

中・大型トラックと長距離バスのCO2排出削減目標は、欧州委案を維持し、2030年に45%減、2035年に65%減、2040年に90%減(いずれも2019年比)とした。都市部の路線バスの全新車のゼロエミッション化は、欧州委案から5年後ろ倒しの2035年としたが、2030年に90%削減という中間目標を設定した。なお、都市間を結ぶバスは、長距離バスと同じ排出削減目標が課される。

また、規則の進捗状況の評価は、欧州委案より1年早い2027年に実施し、より包括的な見直しを行うとした。欧州委は、(1)大型車の新車のライフサイクル全体のCO2排出量の評価と報告に関する方法論策定の可能性、(2)大型車部門でのゼロエミッション車への移行におけるCO2排出量の補正係数の役割や、(3)炭素中立な燃料のみ用いて走行する大型車の登録に関する方法論などについて評価、報告する。

自動車関連業界からは目標実現に向けた環境整備や炭素中立な燃料に不満の声

欧州自動車工業会(ACEA)は1月18日、新たな2030年以降の排出基準は世界で最も高く、メガワット充電システム(MCS)などの充電および水素充填(じゅうてん)インフラの整備促進、包括的なカーボンプライシング制度、運送事業者へのゼロエミッション車購入支援がなければ、規則案の目標達成は不可能と主張した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州自動車部品工業会(CLEPA)は同日、電動車の普及やインフラ整備などが進んでいない現況から、目標達成には多大な投資が必要と述べた。また、炭素中立な燃料のみで走行する車両の扱いについては議論を2027年に先延ばししたことに不満を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

合成燃料(e-fuel)の生産を推進する企業や団体などが参加するイーフューエル・アライアンス(eFuel Alliance)は同日、炭素中立な燃料に関する決定に反発(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。大型車へのe-fuelの利用についてこれ以上の評価は不要で、炭素中立な燃料の生産・供給拡大に向けた投資を可能にする規制こそ必要と主張した。

(滝澤祥子)

(EU)

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