米上院が予算決議修正案を可決、下院との隔たり依然大きく
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月08日
米国連邦議会上院は4月5日、下院が可決した予算決議案(2025年2月27日記事参照)の修正案を賛成51、反対48、棄権1で可決した。共和党から2人が反対に回った。今回可決した修正案では、歳出削減規模を40億ドル(下院案では1兆5,000億ドル)、債務上限引き上げ幅を5兆ドル(下院案では4兆ドル)、減税措置の拡大幅を1兆5,000億ドル(下院案では4兆5,000億ドル)にそれぞれ修正し、合意を目指すとされている。
減税措置の拡大幅が下院案よりも縮小しているように見えるものの、上院案にはさらに「ベースラインの変更」という手法が盛り込まれており、実際の減税幅は下院案を大きく上回ることになるとみられる。下院の予算決議案でも採用されている前提では、2017年減税法に基づいて2025年末で期限切れを迎える所得税減税などを延長しようとする場合、これに必要な費用は追加費用として算定される。しかし、上院案で盛り込まれている「ベースラインの変更」では、2025年から2034年の間の財政赤字を増加させないという条件付きではあるものの、現行の税制を延長する場合にはこれらを追加費用とは見なさないことができると規定されている。1月に米国財務省が発表したレポートでは、所得税・相続税減税の延長に必要な費用は4兆2,000億ドルと見込まれているため、ベースラインの変更を加味した場合の実質的な減税幅は5兆7,000億ドルとなる。
上院が今回可決した予算決議修正案は、下院との間で隔たりが大きく、これがそのまま可決されるかどうかは不透明な状況だ。既に下院の財政強硬派(フリーダムコーカス)の数人の議員は同修正案に反対の姿勢を示しているもようだ(議会専門誌「ザ・ヒル」4月5日)。こうした中、4月2日に発表された相互関税(2025年4月3日記事参照)は、議論に一石を投じる可能性もある。民間の独立税制調査機関タックス・ファウンデーションが4月4日に発表したレポートでは、世界共通関税によって10年間で1兆5,000億ドル、相互関税により1兆3,000億ドルの税収増になると試算されている。現時点では、関税引き上げによる税収増は法案では言及されていないものの、この試算のとおり関税引き上げによる税収増により減税延長コストの過半を賄えることになれば、財政赤字の拡大に懸念を示す議員を説得する大きな材料にもなりそうだ。
(加藤翔一)
(米国)
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