米下院、国境措置や減税などへの追加支出を含む予算決議案を可決

(米国)

ニューヨーク発

2025年02月27日

米国連邦議会下院は2月25日、トランプ政権が重視する国境措置や減税措置の延長などに必要な費用を盛り込んだ2025会計年度(2024年10月~2025年9月)予算決議案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)を217対215で可決した。(1)1兆5,000億ドルの歳出削減、(2)4兆ドルの債務上限引き上げ、(3)4兆5,000億ドルの減税措置の拡大、(4)3,000億ドルの国境対策・国防費の増額を1本で実現することを狙ったもので、上院が可決済みの予算決議案(2025年2月25日記事参照)とは異なる内容になっている。

下院の決議案については、歳出削減規模が不足しているとの財政保守派からの批判や、低所得者向け医療保険メディケイドの削減につながり得るとの穏健派の懸念など、共和党内部でも投票直前まで反対の声があがっていたが、ドナルド・トランプ大統領が反対派の議員を個別に説得した結果、離反は1票に抑えられた(議会専門紙「ザ・ヒル」2月25日)。もっとも、予算決議案に盛り込まれている歳出削減の具体策については議論が先送りされたかたちで、メディケイドの扱いなどの懸案に関しては、今後、決議案に基づいて法案を具体化していく過程でさらなる調整が進められていくもようだ。

それでも、財政保守派からの反対を抑えて4兆ドルの債務上限引き上げを含めた予算の枠組みを可決できたことは、トランプ政権の重視する政策を実現するにあたって大きな進展といえそうで、トランプ大統領も自身のSNSで「大きな第一歩」と賛辞を送っている。

下院で予算決議案が採択されたことを受け、今後は2025年度予算における財政調整措置(注2)の活用に向けて、上下院で決議案の一本化に向けて調整していくことになる。アプローチが大きく異なる両院の間でどのような調整が図られていくのか注目だ。

(注1)予算枠の全体像を示すもの。ここで定められた枠を基に、各歳出法案が策定される。

(注2)この規定により、債務上限や歳出に関する法案は、フィリバスター(議事妨害)を回避して過半数で可決することが可能となる。1歳出年度に1度しか利用できない、上下院で同一の法案を審議しなければならないなど、幾つかの制約がある。

(加藤翔一)

(米国)

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