中国商務部、貿易摩擦の解決に向け外資系企業などと意見交換実施

(中国、米国、ドイツ、EU)

北京発

2025年04月30日

中国商務部は複雑化する国際情勢を受け、外資系企業や中国内の政府関連機関、企業、業界団体と意見交換を相次いで実施した。

商務部の王文涛部長は4月27日、ドイツ自動車産業連合会(VDA)のヒルデガルド・ミュラー会長と会談を行った。王部長は、ドイツの自動車企業は中国の改革開放の証人であり、参加者であり、受益者であると述べ、各国による単独主義や保護主義は国際経済・貿易の秩序とグローバルサプライチェーンの安定性を損ない、自動車産業はその影響を最前線で受けていると指摘した。また、中国とEUは多国間主義と自由貿易を守る2本の大きな柱であり、ドイツとEUが多国間貿易体制とグローバルサプライチェーンの安定を守り、中国と足並みをそろえ、国際経済・貿易のルールを尊重し、EUによる中国製バッテリー式電気自動車(BEV)への相殺関税措置(注1)を早期に適切なかたちで解決するよう、VDAが積極的に働きかけることを求めた。

ミュラー会長は、自動車産業にとってグローバル化が堅持されることが必要で、貿易摩擦が適切に解決されることを期待するとした。また、VDAは保護主義に反対し、欧州と中国のBEVに関する協議が早期に進展して貿易摩擦が解消されることを期待すると表明した。同協会はドイツの自動車企業による中国への投資拡大を奨励するとともに、中国の自動車企業によるドイツへの投資を歓迎するとし、自動車産業の高度化と技術革新を共同で推進するとも述べた。

このほか、商務部は4月24~25日、貿易摩擦への2024年の対応状況を総括し、2025年の重点項目を検討することを目的に、中国の政府関係部門や業界団体、シンクタンクを集めて、全国貿易摩擦対応工作会議を開催した。商務部の郢東副部長はこの会議で、現在の中国では貿易摩擦の烈度が高まり、困難に直面していると指摘した。その上で、自信を持ち、決意を維持し、戦略を重視し、危機の中でも新たなチャンスを育み、変化の中で新たな局面を切り開くべきだと述べた。

また、商務部の凌激副部長は4月23日、米国による関税政策が在中国外資系企業の中国への投資や経営に与える影響について意見交換を行うため、外資系企業円卓会議を主宰した(注2)。同会議には80以上の外資系企業や在中国外国商会が参加し、中国側からは商務部のほか、財政部、税関総署など関係部局の責任者が出席した。凌副部長は、米国による関税を無差別に乱用する単独主義的行動は国際社会に強い不満を呼び起こしているとした上で、外資系企業が理性的な声を上げ、困難を克服して、協力して単独主義と保護主義に打ち勝つことを望むと述べた。

(注1)EUは2024年10月から中国製BEVに対して相殺関税措置を導入しており(2024年11月6日記事参照)、中国はこれに反発してWTOへの提訴などの措置を取っている。なお、王商務部長は2025年3月に訪中したオラ・ケレニウス欧州自動車工業会(ACEA)会長兼メルセデス・ベンツ最高経営責任者(CEO)、BMWのオリバー・ツィプセ取締役会長と会談した際もこの件を提起し、意見交換している(2025年3月31日記事参照)。また、商務部の発表によると、王部長は4月8日にマレシュ・シェフチョビチ欧州委員(通商・経済安全保障担当)とビデオ会議を行い、中国とEUの経済貿易協力の強化と米国による相互関税への対応を協議し、電気自動車(EV)価格に関する交渉を開始することや、中国と欧州の自動車産業の投資協力問題について議論を開始することなどに合意したとしている(2025年4月11日記事参照)。

(注2)米国による中国に対する追加関税や中国による対抗措置、中国政府の対応や企業への影響に関しては、ジェトロの特集:米国関税措置への対応を参照。

(亀山達也)

(中国、米国、ドイツ、EU)

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