米国の相互関税措置に対し、チリは自由貿易の維持強調
(チリ、米国)
調査部米州課
2025年04月07日
米国のトランプ政権が相互関税に関する大統領令を発表したこと(2025年4月3日記事参照)を受け、チリのマリオ・マルセル財務相は4月3日に声明を発表した。チリについては、対米貿易でチリ側が赤字を記録していることから、ベースラインの10%の追加関税が課されることとなったが、マルセル財務相は「正当性がないと考えられる関税の対象になったことを大変遺憾に思う」と述べた。一方で、チリが自由貿易戦略を変更することはないことを強調し、「わが国の成長と発展に重要な要素のため、引き続き開かれた貿易を維持していく」と発言している。また、チリに課された追加関税が10%のベースラインにとどまり、さらに高い関税が課された国もあることから、「チリが他国に比べて競争力を失うことはない。他国産と比べた相対的なコストは現在と同等か、チリにとってより有利になるだろう」と述べ、短期的に米国市場でのチリ産製品のシェアを拡大できる可能性も指摘した。
チリから米国への主要な輸出品は銅で、例年、対米輸出品の2~3割を占めている。しかし、米国は現在、銅(と木材・製材)の輸入が国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を実施中で(2025年3月14日記事参照)、銅は今回の関税措置の対象外となった。
今回の相互関税措置のチリへの影響として、10%の追加関税そのものよりも、貿易の減少や世界経済の成長鈍化がチリ経済に打撃を与えるだろうと、複数のエコノミストが指摘している。また、チリ最大の貿易相手国の中国には今回34%の追加関税が課されており、それによる中国経済の減速もチリ経済には悪影響を及ぼすだろうとみられている。
(佐藤輝美)
(チリ、米国)