GDP成長率予測を下方修正、米国関税の影響も
(ハンガリー、米国)
ブダペスト発
2025年04月08日
ハンガリーのナジ・マールトン国家経済相は3月31日の記者会見で、ハンガリー政府は2025年のGDP成長率予測を2.5%に修正したと発表した。ハンガリー国立銀行(中央銀行)も3月27日に発表したインフレ報告書(2025年3月)で、成長率見通しは1.9~2.9%に引き下げられるとした。政府、中銀ともに、前回の予測(注1)と比べて、経済成長が大幅に悪化するとみている。
主な要因について、中銀のインフレ報告書は次を挙げている。
- 外需減少に伴う工業生産の低迷
- 家計・企業投資の低迷と公共投資の減少
また、長引く地政学的対立や貿易政策の緊張激化による世界経済環境の不確実性にも注目している。
加えて、同報告書は米国の関税措置の影響について特筆し、小規模な経済開放国ハンガリーにとって、国際貿易で価格(関税)と非価格障壁が成長軌道に与える影響は大きいと指摘している。さらに、ハンガリーの各産業が米国の最終消費にどの程度の付加価値を提供しているか(注2)に基づき、影響を最も受けやすい業種として、次を挙げている。
- 電気機器製造業(バッテリーを含む)
- その他の機械製造業
- 自動車・輸送機器製造業
- コンピュータ・電子機器製造業など
一方で、「製品の適度な代替性とプロダクションチェーンの地域的再編成が中期的には関税引き上げの影響を緩和する可能性がある」とも述べている。
自動車に対する米国の関税について、ナジ国家経済相は「影響を評価するには時期尚早」としながらも、「自動車メーカーが水面下で集中的な交渉を行っている」と述べた。
なお、2026年のGDP成長率見通しについては、政府、中銀ともに、楽観的な見方を示しており、政府は4.1%、中央銀行は3.7~4.7%の成長を見込んでいる。
(注1)ハンガリー政府は2025年予算を3.4%のGDP成長率予測に基づいて策定しており、中銀も2024年12月のインフレ報告書で2.6~3.6%の成長を見込んでいる。
(注2)ハンガリーの産業が米国の最終消費に占める付加価値の割合を見ると、最も影響を受けているのは、バッテリー製造を含む電気機器製造業だ。中銀の試算によると、同部門は米国の最終消費で10%の付加価値を提供している(2020年時点)。
(バラジ・ラウラ)
(ハンガリー、米国)
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