シェインバウム・メキシコ大統領、対米交渉の成果と国内政策を発表
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2025年03月14日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は3月9日、大統領府前の大広場(ソカロ)で大規模集会(大統領府3月9日付会見録)を開き、これまでの米国との関税交渉の成果と、国内市場の強化などの国内政策を語った。
米国との関税交渉では、メキシコ政府は米国政府と電話会談での交渉の末、25%の追加関税を4月2日まで延長したこと(2025年3月7日記事参照)を成果として強調した。また、米国が4月2日に全ての国に対して相互関税を発表することもあらためて述べた。相互関税に関するメキシコの見解として、シェインバウム大統領は「メキシコには相互関税は賦課されない。なぜなら、メキシコと米国は30年以上前から2つ〔北米自由貿易協定(NAFTA)、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)〕の貿易協定を署名しており、メキシコと米国双方で関税を課していないからだ」と発言し、メキシコに相互関税の脅威がないことを強調した。
また、米国への合成麻薬フェンタニルの流入を防ぐ戦略として、(1)原因となる麻薬への注意喚起、(2)より多くの国家警備隊の投入、(3)研究所と連携した知見と研究、(4)治安当局と検察との連携を掲げ、麻薬対策を強化していくと述べた。
さらに、国内での政策として、次の5点を挙げた。
- 国内市場の強化:最低賃金を継続的に上げ、国内福祉も充実させる。
- 主食となる食品とエネルギーの自給率の上昇:メキシコ産の製品を生産し、その製品を国内で消費していくことを推進する。
- 雇用の創出を促進するための公共投資を促進:特にメキシコ市からヌエボラレド、メキシコ市からノガレス間の高速道路、水道事業、社会福祉事業、100万戸の住宅提供を行う。
- 「プラン・メキシコ」(2025年1月17日記事参照)による国産化を促進。
- 福祉プログラムの基盤強化:高齢者年金、奨学金、障害者支援、食料自給率を促進する「命の種まき」、中小規模の農業生産者作物と生産を改善する「福祉のための生産」、無料の肥料提供などを行う。特に60歳から64歳の全ての女性への支援、全ての公立学校に通う子どもたちへの奨学金、医療従事者が高齢者や障害者を定期訪問する福祉プログラムという3つの新しいプログラムを実施するとした。
司法改革については、「6月1日にメキシコで初めて最高裁判所を含む裁判官を公選する」と発言し、投票を呼びかけた。最後に、「メキシコは自由で、独立し、主権があり、民主主義のある国だ。われわれの強みは国民であり、われわれの動機は国民の福祉であり、われわれは国民と国に奉仕する使命を持っている」と締めくくった。
(阿部眞弘)
(メキシコ、米国)
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