国務院、「2025年外資安定化行動方案」を発表
(中国)
調査部中国北アジア課
2025年02月28日
中国国務院弁公庁は2月19日、商務部および国家発展改革委員会による「2025年外資安定化行動方案」を発表した。
本行動方案(アクションプラン)では、外資企業による投資誘致と安定化に向けた取り組みの強化策として、「自主的開放の秩序ある拡大」「投資促進レベルの引き上げ」「オープンプラットフォームの機能向上」「サービス支援の強化」の4つのポイントから構成される全20項目が示された。
「自主的開放の秩序ある拡大」では、外資参入ネガティブリスト(注1)に掲載されていない分野については、内外資一致原則に厳格に従うとしたほか、市場参入ネガティブリスト(注2)についても改定し、リスト項目のさらなる削減を進めるとした。また、2024年12月2日に施行された「外国投資家による上場会社に対する戦略的投資の管理弁法」(注3)を着実に運用し、より質の高い外国投資家による中国の上場企業への長期的な投資を促進するとした。そのほか、通信、医療、教育分野などにおける試行開放措置の拡大や、バイオ医薬分野における開放推進などが盛り込まれた。
「投資促進レベルの引き上げ」では、既に進出している外資企業による中国国内への再投資を奨励する政策・措置を検討・策定するとし、外資系企業による投資を奨励する業種の範囲拡大、多国籍企業による投資会社設立の奨励、外国投資家による中国でのM&A投資の利便性向上などが盛り込まれた。このほか、外資系投資会社による国内融資利用制限の撤廃も打ち出された。在中国日系企業などで構成する中国日本商会は、これまで「中国経済と日本企業2024年白書」などで同制限の撤廃を要望してきた。
「オープンプラットフォームの機能向上」では、開発区管理制度の改革推進、自由貿易試験区の高度化に取り組むほか、「サービス支援の強化」では、重大・重点外資プロジェクトに対する政策支援の強化、政府調達における国産品標準システムの確立(注4)、外資系企業に対する融資ルートの拡大を図るなどとした。
商務部国際貿易経済合作研究院の宋思源副研究員は、本アクションプランの注目点の1つとして、2024年3月に国務院弁公室が発表した「ハイレベルの対外開放の着実な推進と外資の誘致・利用の促進に関する行動計画」(2024年3月29日記事参照)との関連性の高さを指摘したうえで、「同行動計画で打ち出された『外資投資に対する魅力向上』が、本アクションプランでは『投資促進レベルの引き上げ』にレベルアップされており、これは中国政府が外資を誘致し、維持し、発展させていくという決心の表れだ」と指摘した(「証券日報」2025年2月20日)。
なお、国家外貨管理局が2月14日に発表した2024年の国際収支統計(速報値)では、同年の中国の対内直接投資額は前年比89.5%減の45億ドルと大幅な減少となった(2025年2月20日記事参照)。
(注1)2024年11月1日から施行されている2024年版ネガティブリスト(2024年9月10日記事参照)が現時点での最新版。同リストにより、製造業についてネガティブリスト上の参入規制は撤廃された。
(注2)外資を含む全ての企業などに適用されるもので、2022年3月25日から施行されている2022年版ネガティブリスト(2022年4月7日記事参照)が現時点での最新版。
(注3)同管理弁法の施行により、中国の上場会社に対する戦略的な投資における外国の適格投資家の範囲が拡大された。詳細は、ジェトロ「日本からの進出に関する制度(中国)」の「備考」参照。
(注4)財政部は2024年12月5日に政府調達に関する製品について、中国産とする基準と、それに対する優遇などを定めた「政府調達分野の国産品標準および実施政策にかかる事項に関する通知」(意見募集稿)を発表し、2025年1月4日までを期間として意見募集を行った(2024年12月13日記事参照)。
(刈屋壮二郎)
(中国)
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