サリバン米大統領補佐官が講演、国際経済政策で同盟国との連携の重要性強調
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年10月28日
米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は10月23日、ブルッキングス研究所が主催したイベントで、「米国の国際経済アジェンダ」とのテーマで講演をした。終始、同盟国との連携を重視する内容となった。サリバン補佐官は2023年4月にも同様のテーマで講演している(2023年5月1日記事参照)。
サリバン補佐官は、安全保障上機微な技術の保護や、非市場的慣行、労働と環境の侵害、経済的威圧に対しては、「パートナー国と緊密に連携することが必要」「米国だけで解決できるものではない」と述べ、同盟国などとの連携の重要性を強調した。その後、「今後10年間、米国のリーダーシップは、パートナー国が米国と同様のアプローチを成功させ、政策や投資で(米国の方針と)整合性と補完性を構築できるよう支援する能力によって評価される」と続けた。
通商政策に対するスタンスは、気候危機、脆弱(ぜいじゃく)で集中した重要鉱物や半導体のサプライチェーン、労働者の権利に対する攻撃、非市場的政策や慣行を用いる国との競争といった今日の課題を考慮していなかった過去の政策から脱却することだと述べた(注)。重要鉱物は中国に過度にサプライチェーンが集中しているとして、サプライチェーンを多様化する投資を行わなければ、中国のような「依存関係を武器化する意思を示している国への依存をますます深めることになる」と警鐘を鳴らした。中国に対する追加関税率の引き上げは(2024年9月17日記事参照)、こうした問題意識の下で行われたとした。さらに、EU、カナダ、ブラジル、タイ、メキシコ、トルコなどが自国産業への打撃を回避するため、米国と同様の措置を講じているとも述べた。
先端技術に対する輸出管理は、軍事的優位を保つため、継続することに議論の余地はないとしつつも、地政学上のライバル国同士で貿易を行わないのは間違いだとし、中間地点を見つける必要があると述べた。その上で、国家安全保障に関する機微な技術のみを管理する「デリスキング」は「デカップリング」とは異なると説明した。質疑応答では、米国政府内や米国とパートナー国との間で、輸出管理に対する意見の相違が依然として存在していることを認めた(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」10月23日)。
11月5日の大統領選挙の投票日が迫る中、バイデン政権高官による同盟国重視の発言が続いている。財務省のジャネット・イエレン長官も10月17日、同盟国を中心に米国の対中政策に賛同する国が増えているとの認識を示し、同盟国にまで高い関税を課す政策は誤りだと述べ、「米国第一」を掲げる共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領を牽制している(2024年10月23日記事参照)。
(注)米国の通商協定戦略の変遷とバイデン政権の方針については、2024年2月9日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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