米商務省、IPEFサプライチェーン協定の下での重要分野と重要物品リストを公表
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
ニューヨーク発
2024年08月27日
米国商務省は8月23日、インド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン協定における重要分野および重要物品リストを公表した。バッテリーや半導体など、これまでバイデン政権が重視してきた分野や物品が指定された。商務省は2024年6月にパブリックコメントを募集し(2024年6月5日記事参照)、産業界などから35件のコメントが提出されていた。
IPEFサプライチェーン協定は2024年2月にフィジー、インド、日本、シンガポール、米国の5カ国で発効し、その後、韓国、タイ、マレーシアでも発効した(2024年6月10日記事参照、注1)。同協定では、IPEFサプライチェーン協議会、IPEFサプライチェーン危機対応ネットワーク、IPEF労働権諮問委員会から成るIPEFサプライチェーン機関の設立が定められている(2023年5月29日記事参照)。このうち、IPEFサプライチェーン協議会を通じて参加国は、重要分野と重要物品のリストを作成、共有することとなっている。
米国は今回、農業、化学、消費財、重要鉱物・鉱業、エネルギー/環境産業、医療・健康産業、情報通信技術製品、運輸・物流の8分野を指定した(詳細は添付資料参照)。これらには先端バッテリー、太陽光パネル、半導体、ルーター(注2)、荷役機器(クレーン)など、ジョー・バイデン大統領が就任直後の2021年2月に大統領令を発表して指定したサプライチェーンを強化する分野や(2023年11月28日記事参照)、バイデン大統領の指示に基づき米通商代表部(USTR)が2024年5月に発表した、1974年通商法301条に基づく対中追加関税の関税率を引き上げた物品が含まれており(2024年5月23日記事参照)、バイデン政権がこれら分野を重視している姿勢がうかがえる内容となっている。なお、リストは状況に応じて随時更新される。
IPEFサプライチェーン協定第10条に基づき、複数の参加国が指定した分野や物品は、サプライチェーンを強靭(きょうじん)化するための行動計画の策定対象となる。また同協定第6条により、協議会は毎年会合の開催が義務付けられており、年次会合で行動計画を策定するチームを設置する。行動計画は、チームの設立から1年以内での協議会への提出が定められている。なお、複数の参加国が指定した場合にのみ行動計画の対象となることから、米国は、今回指定した分野・物品のすべてが選ばれることは考えていない、とプレスリリースで述べている。
(注1)IPEFのそのほかの協定の交渉・批准状況は、2024年8月27日記事参照。
(注2)ルーターは中国から米国への輸入が顕著に減少している製品の1つ。2023年10月16日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
ビジネス短信 9fbf58cb4235c946