第5回日本・アラブ経済フォーラム、東京で開催
(日本、中東)
調査部中東アフリカ課
2024年07月12日
日本の外務省と経済産業省、アラブ連盟、ジェトロの主催で7月10日、第5回日本・アラブ経済フォーラム官民経済カンファレンスが東京で開催された(2024年7月11日記事参照)。2016年以来8年ぶりの開催となり、日本とアラブ諸国の政府や企業の関係者らが多く参加した。齋藤健経済産業相らの開会あいさつに始まり、アラブ連盟のアフメド・アブルゲイト事務総長の基調講演、3つのテーマ(注)に分かれたパネルセッションが行われた。
齋藤経済産業相は、国際情勢が複雑化する中で、日本とアラブ諸国は歴史的に重要なパートナーであり、企業同士の連携が進んでいると強調した。宮田知秀・経団連中東地域委員会委員長は、2023年7月の岸田文雄首相の中東歴訪(2023年7月26日記事参照)の際に交渉再開で合意した湾岸協力会議(GCC)との自由貿易協定(FTA)による日本とアラブ諸国の貿易拡大に期待感を示した。アラブ諸国側の登壇者も、そうした日本の閣僚級の訪問からもアラブ諸国への関心の高さがうかがえるとした上で、特に昨今の複雑な国際情勢の中で、脱炭素社会への移行など地球規模の課題解決に向けて、先進的な技術を持つ日本からの技術提供や人材派遣、投資などを呼びかけた。また、登壇者の多くは日本とアラブ諸国の共同の商工会議所設立を提案し、アブルゲイト事務総長の基調講演では、民間部門、特に日本の中小企業によるアラブ地域での事業拡大の必要性を述べた。
相互投資拡大に向けた取り組みに関するパネルセッションには、田中一成経済産業省大臣官房審議官や矢崎総業NYSセンター長の野口幸一氏らがパネリストとして登壇した。田中氏は、富士フイルムが人工知能(AI)を活用した健康診断ツールの中東での展開や、丸紅のリサイクル技術のアラブ諸国への導入を例に、日本からアラブ諸国へのAIやクリーンエネルギーなどの分野での投資の可能性を示唆した。野口氏は同社の人材育成に関する中東や北アフリカ地域での取り組みを紹介し、同地域は知的労働人口が多く、高度人材育成に適したイノベーション基地だとし、今後も主要な生産拠点としていくという方針を語った。
アラブ諸国側の登壇者は、日本のアラブ諸国側への注力すべき投資分野としてインフラや金融、開発支援の3つを挙げた。特に年齢層の若い同地域には多くのビジネスチャンスがあると強調した。
(注)3つのパネルセッションは次のとおり。
- パネルセッション1:相互投資拡大に向けた取り組み(経済の多角化、イノベーション創出に向けた連携)
- パネルセッション2:気候変動対策に向けた連携
- パネルセッション3:新たな技術とサプライチェーンの強靭(きょうじん)化
(加藤皓人)
(日本、中東)
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