第5回日本・アラブ経済フォーラム、気候変動対策での連携可能性を議論
(日本、中東)
調査部中東アフリカ課
2024年07月11日
ジェトロは7月10日、外務省、経済産業省、アラブ連盟と共催で「第5回日本・アラブ経済フォーラム 官民経済カンファレンス」を東京で開催した。フォーラムでは、日本とアラブ諸国の政府・企業関係者らによるパネルセッションが行われ、気候変動対策がテーマのセッションでは、日本とアラブ諸国の連携可能性が議論された。
アラブ農業開発機構のイブラヒム・アル・ダキーリ事務局長は、気候変動とアラブ諸国の食料安全保障の問題を紹介した。食料需要が増加するアラブ諸国では、農業部門の温室効果ガス排出量削減や、生産性向上のためのイノベーションが必要だとした。また、排水の再生利用など日本の水資源保護技術を高く評価しており、今後の協力に期待すると述べた。
アラブ原子力庁のサレーム・ハミディ長官も登壇し、気候変動対策に原子力が果たす役割について述べた。併せて、太陽光発電や風力発電におけるアラブ諸国の地理的優位性を紹介し、同地域での再生可能エネルギー開発のポテンシャルの高さを強調した。
日本側から登壇した国際協力銀行(JBIC)の天野辰之資源ファイナンス部門長・常務執行役員は、ジェトロ発表の「海外進出日系企業実態調査(中東編)」(注1)で、中東進出日系企業が今後最も有望視するビジネス分野に水素を挙げたことに触れ、同分野の関心の高さを紹介した。また、水素分野プロジェクトが全世界で1,000件以上発表される中、最終投資決定(FID)に至るものは10%未満という現状について、(1)オフテイカー(引き取り手)が決定している、または(2)政府の支援が行われたプロジェクトがFIDに到達する傾向があるというJBICの分析を紹介した。
同じく日本側から登壇した、世界省エネルギー等ビジネス推進協議会の青山伸昭企画委員長は、日本のエネルギー政策の方針である、脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障を同時に達成する「トリプルブレイクスルー」を紹介し、今後、官民で150兆円規模の取り組みを行っていくと述べた。また、日本政府が主導する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC、注2)」構想についても紹介した。
パネルセッションの様子(ジェトロ撮影)
(注1)2023年度の調査結果は「2023年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」を参照。
(注2)岸田首相が2022年1月に提唱。日本の技術や制度を生かしてアジア各国と協力し、アジアのエネルギー・トランジションや脱炭素化を進めることを目的としている。
(久保田夏帆)
(日本、中東)
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