バイデン米政権、AIリスク管理の取り組みにアップル参加を発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年07月30日

米国のバイデン政権は7月26日、人工知能(AI)のルール形成に関するファクトシートを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、米国大手IT企業によるAIリスク管理の「自主的な取り組み」に、アップル(本社:カリフォルニア州クパチーノ)が参加したと発表した。

AIリスク管理の自主的な取り組みは、アマゾン、グーグル、メタ(旧フェイスブック)などの米国大手IT企業が2023年7月に開始した取り組みだ。参加企業は、AIリスク管理に関して強制力のある規則が導入されるまでの間、(1)安全性、(2)セキュリティー、(3)信頼性の3原則を確保するための措置に自主的に取り組むことを約束する(2023年7月25日記事参照)。今回のアップルの参加によって、取り組み参加企業数は合計16社となった(注1)。

ファクトシートでは併せて、AIの開発や利用に関する大統領令(2023年11月1日記事参照)の発令から270日が経過したことを踏まえ、各連邦政府機関が270日以内に実施するよう指示された措置をいずれも完了したと記載した。同大統領令は各連邦政府機関に対し、AIの安全性確保に向けた指針などの策定や、AIに関する国際的な関与のための計画策定などを指示していた(2024年5月1日付地域・分析レポート参照)。具体的に連邦政府機関が実施した措置として、米国商務省国立標準技術研究所(NIST)傘下のAI安全性研究所(AISI)が同日発表した、デュアルユース(注2)基盤モデルのリスク軽減に関する指針案(NIST AI 800-1PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))などを挙げた。同指針案は、デュアルユース基盤モデルの開発者向けに、AIシステムが悪用されることを防ぐためのベストプラクティスを示したものとなっている。なお、AISIは、同指針案の最終版作成に向けてパブリックコメントを募集している(注3)。

また、商務省は同日、AIの開発に関する5つの文書・ソフトウエアなどを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。具体的には、上述の(1)デュアルユース基盤モデルのリスク軽減に関する指針案のほか、(2)開発者や利用者向けに、AIソフトウエアが敵対的な攻撃にどの程度耐えられるか評価をするためのソフトウエア「Dioptra」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。さらに、商務省が2024年4月に発表していた文書案について(2024年5月1日記事参照)、パブリックコメントを踏まえた最終版を発表した。最終版が発表されたのは、(3)生成AIに関するプロファイル(NIST AI 600-1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(4)生成AIおよびデュアルユース基盤モデルのための安全なソフトウエア開発手順(NIST SP 800-218A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(5)AI標準に関するグローバルな関与のための計画(NIST AI 100-5外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)となっている。

(注1)アマゾン、アンスロピック、グーグル、インフレクションAI、メタ、マイクロソフト、オープンAI、アドビ、コヒア、IBM、エヌビディア、パランティア、セールスフォース、スケールAI、スタビリティAI。

(注2)有益または有害な目的の両方に使用可能なAIシステム。

(注3)コメント受付期限は2024年9月9日(米国東部時間)まで。コメント提出方法はEメールで、宛先はNISTAI800-1@nist.gov、件名には「NIST AI 800-1, Managing Misuse Risk for Dual-Use Foundation Models」を明記することが必要。

(葛西泰介)

(米国)

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