南ア準備銀行、政策金利を8.5%に据え置き
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2024年06月06日
南アフリカ共和国準備銀行(SARB)の金融政策委員会は5月30日、政策金利のレポレートを8.25%に維持することを決定した。4月の消費者物価(CPI)上昇率が5.2%に下がり、今後のインフレ予想の低下や、経済成長率の伸びが引き続き厳しい状況にある(2024年3月15日記事参照)ため、レポレート引き下げを予測する向きもあったが、SARBはインフレへの楽観的な見通しに警鐘を鳴らしたかたちとなった。
SARBのレセチャ・クガニャゴ総裁は会見で「今後数年間は成長が緩やかに加速し、インフレ率も目標値(4.5%)で緩やかに安定する」としながらも、「現時点では不確実性がいつも以上に高まっている」と述べ、レポレートを据え置くとの決定は「(金融政策委員会の)全会一致だった」と明らかにした。背景には、米国連邦準備制度理事会(FRB)も利下げを見送り続けていることや、原油価格が高止まりしていること(2024年初1バレル80ドル)、為替相場も不透明なことが決定の背景にあるようだ。
加えて、過去3年間、インフレ率が目標の4.5%を超えて推移してきたために、同総裁は「今後2年で4.5%を下回ると考える企業や労働組合はほとんどない」として、インフレ安定化への期待に対して、目標値(3~6%、中間値4.5%)を早期に実現することが必要だと述べた。
SARBはインフレ率の今後の見通しについて、燃料と食品の価格圧力の弱まりから、2025年第2四半期(4~6月)には前述の4.5%水準で安定するとし、今後の経済見通しにも大きな変更はないとした。2024年第1四半期(1~3月)は電力供給停止が減少したにもかかわらず、主要な経済活動指標の改善が見られなかったが、第2四半期以降の緩やかな回復により相殺されるとし、2024年の年間GDP成長率予測は1.2%のまま据え置いた。
今回の発表は、5年に1度の南ア総選挙投票日の翌日に行われた(2024年6月3日記事参照)。開票速報が順次伝えられる中、外国為替市場はビジネスに有利な選挙結果を期待し、通貨ランドが高値に振れる場面も見られたため、クガニャゴ総裁の会見も言葉を選びながら行われた。
次回の金融政策委員会は7月19日に予定されている。
(的場真太郎)
(南アフリカ共和国)
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