EV用バッテリーリサイクルの米プリンストンニューエナジー、サウスカロライナ州にリサイクル拠点設立
(米国)
アトランタ発
2024年06月26日
米国サウスカロライナ州商務省は6月20日、プリンストン大学発のクリーンテック関連スタートアップのプリンストンニューエナジー(PNE)が同州チェスター郡に、1,100万ドルを投じて、リチウムイオン電池(Lib)のリサイクル施設を設立すると発表した。
PNEはプリンストン大学の研究を基に2019年に設立され、電気自動車(EV)や家電製品などのLibのリサイクルを行っている。同社によると、同社が特許権を保有する低温プラズマ支援分離プロセス技術により、Libに含まれる全てのリチウムイオン材料の95%以上が回収可能で、従来の方法に比べて、コストを最大40%、環境フットプリント(注1)を最大70%削減できる。
今回新設する2万5,000平方フィート(約2,323平方メートル)の施設では、EVや生産工程で発生するスクラップから高品質なブラックマス(注2)と再生正極活物質を生産する予定だ。同社によると、施設完成後は年間1万トン以上のバッテリー用正極材料を生産することとなり、これは年間10万個以上のEV用Libに使用される数量に相当する。新施設では新たに41人を雇用する予定で、2024年第3四半期(7~9月)の操業開始を見込んでいる。
PNEは2022年10月にテキサス州のウィストロン・グリーンテックと共同で、年間500トンのスクラップやバッテリーを処理するパイロット生産ラインを立ち上げたほか、6月17日には総額3,000万ドルのシリーズA資金調達ラウンド(注3)を完了したことを発表している。さらに、米国エネルギー省から1,200万ドルと437万5,000ドルの助成金も獲得している。
米国では、インフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ削減法(IRA)などに基づき、クリーンエネルギー社会への移行に向けて、EV用バッテリーリサイクルも含めたEVインフラ整備が進められている(2023年6月16日付調査レポート参照(1.5MB))。サウスカロライナ州でも近年、米国レッドウッド・マテリアルズや米国サーバ・ソリューションズ、米国アルベマールなどにより、EV用バッテリーリサイクル関連の投資が相次いでいる(2022年12月16日記事、2023年3月27日記事、2023年3月29日記事参照)。
(注1)温室効果ガス(GHG)による気候変動への影響だけでなく、人体の健康や生活の質、生態系など複数の環境影響領域を評価し、一定の算定基準で数値化したもの。
(注2)Libを放電、乾燥、破砕、選別した後に得られる原料の濃縮かす。
(注3)スタートアップ企業が追加開発や販路開拓のためにエクイティーファイナンス(企業が新株を発行して株主から出資を募る資金調達方法)を実施する段階。
(横山華子)
(米国)
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