EV電池リサイクルのレッドウッド、35億ドル投じて米国2カ所目のバッテリー材工場建設へ
(米国)
アトランタ発
2022年12月16日
電気自動車(EV)用バッテリーのリサイクルなどを行う米国のレッドウッド・マテリアルズ(本社:ネバダ州カーソンシティ)は12月14日、サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事とともに、35億ドルを投じてEV用バッテリー材の工場を建設すると発表した。ネバダ州に現在建設中の工場に続き(2022年8月2日記事参照)、同社にとって米国2カ所目の工場となる。
同社の発表によると、サウスカロライナ州の最大都市チャールストン市の郊外に敷地面積600エーカー(約2.4平方キロメートル)以上のキャンパスを新たに建設し、使用済みバッテリーをリサイクルしてリチウムイオン電池の主要構成素材である正極材・負極材を生産する(注1)。初期生産能力は年間100ギガワット時で、これによりEV100万台分以上のバッテリー供給が可能となる見通しだ。ネバダ州の工場同様、工場の操業は全て電力で行われ、化石燃料を一切使用せず、クリーンエネルギーのみを使用する。2023年第1四半期(1~3月)に着工し、同年内には最初のリサイクルプロセスを開始する計画で、1,500人以上の雇用を見込んでいる。
レッドウッド・マテリアルズは、EV大手テスラの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)だったJB・ストローベル氏が2017年に設立した、クローズドループ(注2)のバッテリーエコシステムの構築に取り組む米国のスタートアップ。使用済みリチウムイオン電池のリサイクルを通じて国産の正極材・負極材を大量に供給することで、環境負荷の低減やバッテリーコストの抑制を推進している。2030年までに年間EV500万台分の正極材・負極材を提供することを目標に、既にトヨタ(2022年6月30日記事参照)や、フォード、フォルクスワーゲン、ボルボ、エンビジョンAESCといった完成車・バッテリーメーカーとバッテリーのリサイクルに関する提携を発表している。また、11月にはパナソニックエナジーがカンザス州に建設中のバッテリー工場での生産で、レッドウット・マテリアルズから正極材と銅箔(どうはく)を調達することを発表している(2022年11月16日記事参照)。
レッドウッド・マテリアルズはサウスカロライナ州への進出の背景について、州に集積する自動車産業(注3)の存在とそれを支える豊富な労働力、原材料の輸入や将来的な海外輸出を見据えたチャールストン港の活用などを挙げている。
同社の投資発表はサウスカロライナ州史上最大の投資案件となる。マクマスター州知事は「レッドウッド・マテリアルズの記録を塗り替える発表は、自動車産業が革新する中、サウスカロライナ州が完成車メーカーとサプライヤーにとってトップの目的地であり続けるための州の戦略的な計画が機能していることを示している」と語った。
(注1)同社の発表によると、現時点で正極材と負極材は北米で生産されていない。
(注2)不純物を取り除くことで素材として再利用でき、無限に循環利用されるリサイクル。
(注3)サウスカロライナ州では、ボルボ、BMWがバッテリー式電気自動車(BEV)の生産を発表し、エンビジョンAESCがバッテリー工場の建設を発表するなど、EV・バッテリー関連の投資が相次いでいる(2022年10月17日付地域・分析レポート、10月20日記事、12月13日記事参照)。
(石田励示)
(米国)
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