米消費者金融保護局、後払い決済サービス(BNPL)事業者に対する規制発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年05月23日

米国消費者金融保護局(CFPB)は5月22日、柔軟な後払い決済サービス「バイナウ・ペイレーター(BNPL)」を提供するサービス事業者がクレジットカードプロバイダーであることを確認する解釈規則を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

BNPLは、商品やサービスを購入した後に代金を一定期間内に分割で後払いする形式の決済方法。利用に当たってクレジットカードのような厳格な審査がないことから、主に若年層や低所得者層を中心に利用が拡大し、年末商戦の好調さを支える1つの要因となっていた(2024年1月23日記事参照)。他方で、BNPLに対しては、消費者の過剰支出を助長するとの批判や、紛争解決処理が未成熟といった批判もあり、当局による監視強化を要請する声が上がっていた(2023年12月25日記事参照)。

CFPBは今回、BNPLサービスについて、(1)オンラインや店舗で支払う際に、クレジットカードと並ぶ決済方法として扱われている、(2)クレジットカードと同様にデジタルユーザーアカウントにひもづけて使用されている、(3)支払い処理とクレジットサービスを組み合わせ、販売者に取引手数料を支払わせるモデルなどの理由を挙げて、クレジットカードに近い代替手段として利用されており、クレジットカードプロバイダーと同等の消費者保護が必要と結論付けている。消費者保護のためにBNPL事業者が求められるのは、「貸付真実法(the Truth in Lending Act)」の内容で、具体的には次のとおり。なお、同解釈規則に関しては、8月1日までパブリックコメントを受け付ける。

  1. 紛争の調査:BNPL事業者は消費者が起こした紛争を調査することが義務付けられる。調査中は支払い要件を一時停止することと、場合によってはクレジットを発行することが必要となる。
  2. 返品された製品、またはキャンセルされたサービスの払い戻し:消費者が製品の返品や、サービスのキャンセルを行った場合、消費者の口座に払い戻しをすることが義務付けられる。
  3. 定期的な請求書の提供:クレジットカードと同様に、定期的な請求書の発行が義務付けられる。

今回の発表に対して、BNPL事業者からは、規制の必要性を認めつつも、クレジットカードとBNPLのサービスの違いを認識するべきとの声が上がる。クラーナ、ペイパル、ジップなどの主要なBNPL事業者が加盟する金融テクノロジー協会(FTA)のペニー・リー会長兼最高経営責任者(CEO)は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「FTA加盟企業は紛争や返金を含む強力な消費者保護に取り組んでおり、これらの保護が業界全体やBNPLサービスを提供する企業に一貫して適用されるべきということに同意する」としつつ、「BNPLはクレジットカードとは根本的に異なる。BNPLサービスは未払い残高に利息がかからず、リボルビングの機能もなく、ユーザーの成功を中心とした収益モデルになっている」と指摘した。今後もリボルビングと高額な手数料に依存するビジネスモデルの製品との違いを踏まえてCFPBにコメントしていきたいと述べた。

(加藤翔一)

(米国)

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