米上院議員、消費者金融保護局に後払い決済の監視強化を要請、債務増を懸念

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月25日

米国上院の銀行・住宅・都市問題委員長のシェロッド・ブラウン上院議員(民主党、オハイオ州)は12月18日、ラファエル・ワーノック上院議員(民主党、ジョージア州)とジョン・フェッターマン上院議員(民主党、ペンシルベニア州)とともに、消費者金融保護局(CFPB)のロヒット・チョプラ局長宛ての書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、消費者の過剰支出などの懸念から、支払いを分割できる後払い決済〔バイナウ・ペイレーター(BNPL)〕サービスの監視を強化するよう要請した。

BNPLは、商品やサービスを購入した後に代金を一定期間内に分割で後払いする形式をとり、期限内に支払いを済ませた場合は、原則として利息が課されない。利用に当たってクレジットカードのような厳格な審査がないことが特徴とされており、主に若年層の間で利用が拡大している(2022年2月2日付地域・分析レポート参照)。米国では、新型コロナウイルス感染拡大に伴うオンライン販売の拡大とともに急速に普及し、CFPBが2022年に実施した調査によると、BNPL事業者大手5社(注)によるローンの総額は、2019年の20億ドルから2021年には242億ドルまで12倍以上に跳ね上がった。

上院議員らは書簡で「BNPLは、一部の消費者に柔軟性の高いサービスを提供するものの、特にホリデーシーズン中の大幅な利用増加を考慮すると、CFPBが引き続き監視し、警戒すべき新たなリスクも提示している」と警告している。また、BNPLは支払い能力を超えて消費を行うことを推奨して設計されている可能性があり、結果として短期間で家計を圧迫し、BNPLの債務を管理できなくする危険性があると指摘している。

また、前述の調査によると、BNPLは、若年層のほか低所得で信用力が低い消費者の間で利用される傾向があるとされている。これらの消費者は、強制的な自動支払い、遅延損害金など、BNPLの潜在的に有害な側面を受け入れざるを得ない余裕のない人々だ。議員らは、年末商戦後にこれらの財政的に弱い消費者がBNPLで抱えた負債で支払い困難な状況に陥るリスクを懸念している。

なお、CFPBは、今回の書簡が発出される以前から、消費者金融市場のBNPLの動向を注視し、各種調査の実施を進めている。2022年9月にはBNPLの市場動向と消費者への影響に関する調査報告書を発表し、2023年3月にはBNPLで債務者となる消費者の財務状況をまとめた報告書も公表している。さらに、米通貨監督庁(OCC)は12月6日、金融機関に対し、BNPL融資に関する政策ガイダンスを発表するなど、対応を進めている。

(注)調査対象のBNPL事業者は、アファーム、アフターペイ、クラーナ、ペイパル、ジップ。

(樫葉さくら)

(米国)

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