2023年の米年末商戦の小売売上高、前年同期比3.8%増、値引きや後払い決済が拡大

(米国)

ニューヨーク発

2024年01月23日

全米小売業協会(NRF)は1月17日、2023年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比3.8%増の9,644億ドルだったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、NRFが11月に発表した前年同期比3~4%増の予測(2023年11月6日記事参照)と一致した。新型コロナウイルス禍中の景気刺激策によって前例のない小売り支出率を記録した過去3年間の成長率には劣るものの、新型コロナ禍前の過去10年間の平均成長率(3.6%増)をやや上回る結果となった。また、商務省が同日に発表した小売売上高(季節調整値、前月比)では、11月が0.3%増、12月が0.6%増と、消費者の購買意欲は旺盛だったことが示された(2024年1月19日記事参照)。ただし、これらの消費は、小売業者による前年を上回る値引きや、消費者による柔軟な後払い決済サービス〔バイナウ・ペイレーター(BNPL)、注〕の利用拡大に支えられたとみられ、今後も消費の強さが持続するかは注視する必要があるだろう。

今回の発表について、NRFのチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンズ氏は「個人消費は2023年を通して著しく底堅く推移し、年末商戦に向けて堅調なペースを保って1年を終えた。インフレは家計にとって最大の懸念事項だったが、商品価格は顕著に緩和し、労働市場の健全性にも支えられ、小売業者にとっては好調なホリデーシーズンとなった」と評価した。

年末商戦では電子商取引(EC)が高い存在感を示した。ECを含む無店舗小売りが前年同期比8.2%増の2,768億ドルとなり、NRF予測の2,737億~2,788億ドル(同7.0~9.0%増)と一致した。米国ソフトウエア大手アドビシステムズによると、ホリデーシーズン全体を通して、電化製品では値引き率が最大31%と前年の25%を上回るなど、ECの主要カテゴリーの多くで値引き率が過去最高を記録した。インフレが続く中、消費者が実店舗よりもECを選択する傾向が顕著だった。また、支払いを分割できるBNPLサービスによる購入額は前年同期比14%増の166億ドルと過去最高を記録し、前年から21億ドル増加したことなどが明らかになった。

アドビ・デジタル・インサイツのリードアナリストのビベク・パンドヤ氏は「消費需要の不透明感が漂う中で、小売業者はホリデーシーズンに買い物客を引き付けるために、値引きや柔軟な支払い方法に頼った。この戦略は効果的で、サイバーマンデーやブラックフライデーなどの重要な日にはオンラインでの支出が過去最高を記録し、1日当たりの支出額が40億ドルを超える日が11日間と新記録を打ち立てた」とした。

なお、NRFによると、2023年通年の小売売上高は前年比3.6%増の5兆1,300億ドルで、予測の年間成長率4~6%をやや下回る伸びにとどまった。

(注)商品やサービスを購入した後に代金を支払うもので、一般的には一定期間内での分割による後払いの形式をとり、その際に利子や手数料はかからない。

(樫葉さくら)

(米国)

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