Z世代とミレニアルの約8割が中国ブランド車の購入を検討、米民間調査結果

(米国)

ニューヨーク発

2024年05月24日

米国の自動車市場調査会社のオートパシフィックは5月22日、米国の18歳から80歳までの自動車所有者約800人を対象に実施した、中国ブランド車とプライバシーに関する意識調査(注1)の結果を発表した。中国車の米国市場への参入阻止をめぐっては、米政府がインフレ削減法(IRA)など法規制の整備(2024年5月15日記事参照)や、対中追加関税の見直しなどの措置を講じている(2024年5月23日記事参照)。

調査結果によると、回答者の約半数が中国ブランド車に対し親しみを持っており、35%が「中国ブランドの新車購入を検討する(注2)」と回答した。さらに年齢別に詳しくみると、40歳未満の76%が「購入を検討する」と回答。年齢が上がるに従いその割合は減少し、40~49歳が58%、50~59歳が42%、60~80歳が26%となった。なお40歳未満では45%が「必ず検討する」と回答している。オートパシフィックのエド・キム社長兼主任アナリストは「現在米国で販売されていないにもかかわらず、米国の多くの消費者が中国ブランド車に精通している。特にミレニアル世代とZ世代(注3)が顕著で、購入の可能性が最も高い」と述べた。

また、「中国ブランド車が米国で販売される場合のプライバシーに対する懸念」に関しては、全世代において70%以上が「懸念する」と回答し、年齢による大きな差はなかった。若い世代で、プライバシーに対する懸念が高いにもかかわらず、購入を検討するという回答結果について、キム氏は「われわれが毎日快適に使用しているスマートフォン、スマートウォッチ、コネクテッドホームデバイスのほとんどが中国で製造されていることを考えると、中国ブランド車に対するプライバシーの懸念は最終的に薄れる可能性が高い」と分析した。

中国ブランド車が米国内で生産された場合、消費者の購入検討を促すか、との質問に対しては全回答者の16%、40歳未満の39%が「促す」と回答。さらに、中国ブランド車がメキシコで生産され米国で販売される場合、購入を検討するかとの質問に対し、全回答者の約37%、年齢別では40歳未満の73%、60~80歳の約29%が「検討する」と回答した。

この質問の背景には、現行の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下で原産地規則を満たしたメキシコ製自動車の輸入関税が無関税であることや、IRAの下で、メキシコを含む北米で最終組み立てが行われたクリーンビークル(注4)が税額控除の対象となることなどがある。中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)がメキシコで生産開始を検討していることが報じられており、米国内ではメキシコ経由での中国ブランド車の市場参入に対する懸念が高まっている。オートパシフィックのロビー・デグラフ製品・消費者インサイト部門マネージャーは「若い世代の買い物客は、海外で中国の自動車メーカーが生み出している魅力的な製品を明らかに認識している」「彼らがそれらを手に入れることができるのが『いつ』なのかの問題にすぎない」と述べた。

(注1)購入時期については言及されていない。

(注2)「必ず検討する」「多分検討する」の合計。

(注3)「ミレニアル世代」は1981~1996年生まれ、「Z世代」は1997~2012年生まれを目安とする(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)。

(注4)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(大原典子)

(米国)

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