EU理事会、AI法案を採択、2026年中に全面適用開始へ

(EU)

ブリュッセル発

2024年05月27日

EU理事会(閣僚理事会)は5月21日、人工知能(AI)を包括的に規制する規則案(AI法案)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU域内で提供されるAIシステムの安全性や信頼性と基本的人権の尊重を確保すべく、域内で一律に適用されるAI規制枠組みを規定するものだ。AI規制に関する議論が各国で進む中で、EUは世界に先駆けてAI法案を成立させ、AI規制の世界標準にしたい考えだ。

今回の採択により、AI法案の立法手続きは事実上完了した。今後、EU官報への掲載から20日後に施行され、2026年(施行から24カ月後)から全面的に適用を開始する。ただし、提供が禁止されるAIシステムに関する規定などは施行から6カ月後に、生成型AIに関する規定などは施行から12カ月後に適用を開始する。

AI法案の規制内容は、政治合意(2023年12月13日記事参照)に基づくもので、AIのリスクに応じてAIシステムを規制する。容認できないリスクを伴う用途についてはAI利用を禁止し、高リスクのAIシステムについては厳格な要件を課す。一方で、リスクが限定的なAIシステムについては透明性要件のみを課し、最小リスクのAIシステムについては新たな義務は課さない。また、生成型AIについても原則、透明性要件のみとなる。

AI規制の世界標準化にとどまらず、AI開発支援を強化する方針

EUは、AI規制を進めるだけでなく、米国が先行し、世界的に競争が激化するAI開発についても積極的に支援する方針だ。AI法案には、隔離された環境下に限定することで革新的なAIシステムの開発やテストなどを可能にする規制緩和策「AI規制サンドボックス」に関する規定が盛り込まれている。また欧州委員会は2024年2月、域内のスタートアップや生成型AIの開発に向けた支援パッケージ(2024年2月1日記事参照)を発表。EU理事会も、今後のデジタル政策の方針として、域内のAIエコシステムを強化すべく、欧州委員会と加盟国による支援の調整を進めるとしている。このほか、欧州議会の最大会派である欧州人民党グループ(EPP)も、6月の欧州議会選挙を前に発表した選挙公約(2024年3月15日記事参照)において、EUがAI分野の主導的な地位を確保すべく、AIの過剰な規制でなく、開発と活用を重視する姿勢を明確にしている。

(吉沼啓介)

(EU)

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