2023年に投資誘致件数は前年より減少も、投資額は大幅増

(オーストリア)

ウィーン発

2024年03月25日

投資誘致機関のオーストリア経済振興会社(ABA)は2月27日、2023年の業績を発表した。同年のオーストリア国内への投資誘致案件数は325件と、2022年の358件(2023年2月24日記事参照)より少なかったが、投資額は13億7,200万ユーロで、2022年の5億ユーロ弱を大幅に上回った。2023年の投資誘致案件で2,419人の雇用が創出される見込み。

投資額の拡大の主な要因は、医薬品などのライフサイエンス分野の既進出企業による大型の再投資だ。日本の武田薬品工業はリンツの製造拠点に、2025年までに1億ユーロを投資するほか、ウィーンで新しい研究開発センターの建設を開始した。ドイツのフレゼニウスはグラーツ市周辺のバイオシミラー(バイオ後続薬)の品質管理拠点を拡大する。スイスの薬品大手のノバルティスとオクタファルマもそれぞれ、オーストリアの製造拠点を拡大する予定だ。

投資案件を業種別でみると、情報通信技術(ICT)68件、ビジネス関連サービス52件、卸売業41件、エネルギー・環境技術23件、小売り20件が上位5位を占める。研究開発拠点としての投資は35件だった。

国外のスタートアップによる投資は39社だった。このうち、日本発スタートアップのGodotは2023年5月にウィーンで人工知能(AI)の研究開発拠点を設立した。中国のユナイテッド・マイクロ・テクノロジーはリンツ市でIoT(モノのインターネット)向けの高周波回路を開発している。現在はリンツ大学のオープン・イノベーション・センターに入居しており、2025年にリンツ市内の独自の拠点に移転する予定。

国別でみると、隣国からの投資が多い。ドイツが95件で1位、イタリア(23件)、スイス(22件)と続く。オランダ、ハンガリー、ウクライナ、米国からも10件以上の投資案件があった。ドイツからは上述のフレゼニウスのほか、自動車部品・電動工具大手のボッシュがリンツで水素研究開発拠点を設立した。

投資先の地域をみると、首都ウィーンが188件と圧倒的に多かった。ケルンテン州が25件、オーバーエステライヒ州とシュタイヤマルク州はそれぞれ22件だった。

ABAとウィーン経済大学の調査によると、2023年にオーストリアに事業本部(HQ)を置いている国際的な企業の数は前年より22社増え、412社となった。

ABAは2019年から外国の専門人材と企業に対するサポートも行っている。2023年には担当部署の「ワーク・イン・オーストリア」を通じて、就労滞在許可の「赤・白・赤カード」(注)の取得支援として3,889件の相談に応じた。ABAのオンライン人材募集プラットフォームでは、オーストリア企業による求人や外国の専門人材による求職の登録ができる。これまでの募集は欧州のIT、技術、ライフサイエンスの専門人材を中心に行われたが、2024年はブラジル、インドネシア、フィリピンなどの欧州以外の国にも募集を広げる予定だ。労働・経済省は3月18日、専門人材戦略に関する関係省庁会合を初めて開催し、今後「赤・白・赤カード」の発行の迅速化に向けて取り組む意向を発表した。

(注)詳細はオーストリア制度情報「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」を参照。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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