2022年の投資誘致件数、前年並みを確保

(オーストリア)

ウィーン発

2023年02月24日

2022年に投資誘致機関のオーストリア経済振興会社(ABA)が支援し、オーストリア国内に拠点を設立した外国企業は前年並みの358社となり、高水準を維持した。国別ではドイツ、イタリア、スイスからの投資が約半数を占め、日本からは3社の投資があった。

ABAが2月13日に発表した2022年の投資誘致結果によると、投資総額は4億9,070万ユーロ、2,893人の雇用が創出された。ABA総裁のレネー・トリッチャー氏は、現在の経済や地政学的に難しい状況下でも、気候・変革に対する積極的な政策やエネルギーコスト助成、段階的な税制改革などにより、オーストリアは引き続き魅力的な事業拠点と述べた。

国別では、オーストリアと経済的・地理的に密接な関係にあるドイツからの投資が120社でトップ。オーストリアと国境を接するイタリアが31社、同じく国境を接するスイスが21社で続き、3カ国で全体の約半数を占める。

アジアからの進出は42社あり、前年の27社から大幅に増えた。一方で、日本からの投資は3社(前年3社)、韓国からは1社(同1社)、中国からは7社(同6社)と、3カ国ともに前年とほぼ同じ状況だった。

進出先をオーストリア国内の地域別でみると、最も多い201社が首都ウィーン、29社がドイツ、イタリアと国境を接するチロル州、25社がドイツ、チェコと国境を接するオーバーエスターライヒ州に、それぞれ投資を行った。

産業別でみると、進出企業の多くはIT分野で80社、次いでビジネス関連サービス(55社)、卸売業(33社)となっている。また、スタートアップ企業の進出は2020年から3倍に増えて46社、うち情報通信技術(ICT、26社)、ライフサイエンス(7社)が主要なセクターとなっている。

日本企業に特に今後期待する分野として、ABAのアジア地域担当部長のマティアス・アーデルベーラー氏はジェトロに対し、ライフサイエンスとハイテク分野を挙げた。雇用を創出し、イノベーションを持ち込むことができる企業が歓迎されている。

その代表例の1つが武田薬品工業だ。日本企業としても医薬品企業としてもオーストリア最大の雇用主で、約4,500人の従業員を擁している。同社は、優れた職場環境を提供している企業に授与される「トップ・エンプロイヤー・オーストリア」をここ数年連続して受賞している。また、新たに数億ユーロを投資し、2025年までには首都ウィーン近郊に「未来の研究所」を建設、約250人の研究者を雇用する予定だ。

(金子マヌエル)

(オーストリア)

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