EU、強制労働製品のEU域内での流通と域外輸出を禁止する規則案で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月12日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は3月5日、強制労働により生産された製品のEU域内での流通、EU域外への輸出を禁止する規則案について政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

禁止対象となるのは、採掘、収穫、生産、製造などサプライチェーンのいずれかの段階において、部分的にあるいは全面的に強制労働が用いられた製品だ。当局は、強制労働の疑いがある製品に関し調査を実施し、強制労働があると判断した場合、事業者に対して当該製品のEU市場からの回収および廃棄を命ずることができる。規則案は製品に焦点を当てたもので、企業持続可能性デューディリジェンス(DD)指令案(2024年3月5日記事参照)とは異なり、事業者にDD義務を課すものではない。ただし、欧州委員会が指定する特定の製品に関しては、事業者は通関時に製品の製造事業者やサプライヤーなどの追加情報の提出が必要となる。

今回の政治合意では、強制労働の疑いがある製品の調査など、欧州委が提案した実施枠組みに修正が加えられた。EU域内に強制労働の疑いがある場合は、欧州委案どおり加盟国当局が調査するが、域外での強制労働の疑いに関しては、より効果的な調査を可能にすべく、欧州委が主導する。

また、規則案は調査の実施において、リスクに基づくアプローチを採用。欧州委は強制労働リスクに関する情報をデータベース化する。その際、欧州委は、国家主導の強制労働による場合を含め、「高リスク」である特定の地理的地域における特定の産業をリスト化する。なお、現地報道によると、欧州議会が求めていた、「高リスク」の対象製品を強制労働製品とみなし、事業者に強制労働製品でないことの証明を求める規定は盛り込まれなかった。

また、供給リスクのある重要製品に関しては、当局は強制労働製品であっても処分を命じない決定をすることができ、サプライチェーンにおける強制労働が解消された場合には当該製品を市場に戻すことを可能とすることで合意した。現地報道では、規則案は新疆ウイグル自治区の人権状況に関連して中国を念頭に置きつつも、EUが太陽光パネルなどネットゼロ関連製品の多くを中国からの輸入に依存している点(2023年12月15日付地域・分析レポート参照)を考慮した結果だとしている。

規則案は、2022年9月に欧州委が発表したもの(2022年9月16日記事参照)。今後、両機関による正式な採択を経る必要がある。採択された場合、施行3年後に適用を開始する。

(吉沼啓介)

(EU)

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