バイデン米大統領が一般教書演説、「前任」との違い強調

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月08日

米国のジョー・バイデン大統領は3月7日、就任後3回目となる一般教書演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。演説では、外交から経済、米国の社会課題まで広範な内容について、これまでのスタンスをあらためて強調した。また、主要な対抗の候補がいないまま大統領選挙に向けた民主党の予備選挙で独走している中、11月の本選を見据え、共和党候補者になると見込まれるドナルド・トランプ前大統領との違いを強調する場面も複数回みられた。

冒頭でバイデン大統領は、自由と民主主義が世界で攻撃を受けていると述べ、ロシアのウクライナ侵攻を批判し、議会に対してウクライナへの支援を呼びかけた。内政では、体外受精(IVF)による治療を制限する判決を出したアラバマ州最高裁判所の判断を批判し、生殖の自由を訴えた(2024年2月27日記事参照)。経済面では、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)などによって米国への投資が拡大し、多くの雇用を生んだとした。また、中産階級が国を支えていると述べ、会場に招いた全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長を紹介し、自分はピケに参加した初めての大統領だと述べ(2023年9月27日記事参照)、史上最も労働組合寄りの大統領だと誇示した。

不法移民の大量流入によって社会課題となっている国境警備対策についても、時間を割いた。連邦議会上院が超党派で提出した国境措置を強化する法案は、国境を警備する警官や移民審査官を増員し不法移民問題を解決に導くとして、あらためて同法案への支持を表明した。なお、同法案は上院で否決されている(2024年2月8日記事参照)。気候変動対策については、「2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を半減させる」「何万ものクリーンエネルギー関連の雇用を創出する」などとして、世界の歴史上、最も重要な気候変動対策を講じると力を込めて訴えた。

戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区に関しては、罪のない人々の命を守り、救うことが優先されなければならないと述べた。民主党の予備選挙では、ガザ地区を攻撃するイスラエルを支持しているとして、バイデン大統領に対する「抗議票」が一定数集まっていることが注目されていた(2024年3月7日記事参照)。

最後に中国に触れた。「対中貿易赤字は過去10年間で最低にまで減少した」「米国の先端技術が中国の兵器に使用されることがないようにした」と自身の成果を述べた。米政府は近年、先端技術の流出防止に力を入れており、輸出管理を強化している(2024年1月18日記事参照)。なお、「中国とは競争はすれども衝突は望まない」と、これまでの姿勢をあらためて述べた。

大統領選挙の本選で対戦すると見込まれる共和党のトランプ前大統領に対しては、複数回、自身の「前任」との言葉を使い、ロシアのウクライナ侵攻に対して「やりたいようにやればよい」と発言していることや、生殖の自由を制限することを約束していること、超党派の国境措置強化法案に反対していること、銃による暴力に何も措置を講じなかったことなどを取り上げて批判した。

(赤平大寿)

(米国)

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