米下院がマヨルカス国土安全保障長官の弾劾決議を否決、上院は国境措置強化法案を否決

(米国)

ニューヨーク発

2024年02月08日

米国の連邦議会下院は2月6日、共和党が提出していた国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官を弾劾訴追する決議案を、賛成214票、反対216票、棄権1票で否決した。賛成は全て共和党議員、反対は全ての民主党議員210人と共和党員4人となった。

反対票を投じた下院の共和党議員は、ケン・バック議員(コロラド州)、マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州)、トム・マクリントック議員(カリフォルニア州)、ブレーク・ムーア議員(ユタ州)だった。

マヨルカス長官を弾劾訴追する決議案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、同氏の国土安全保障長官としての任期中、移民および国境警備に関する法律に繰り返し違反し、その結果、毎年何百万人もの外国人が米国に不法入国し、その多くが不法に残留することになったとしている。本決議案を中心となって進めていた、下院国土安全保障委員会の委員長であるマーク・グリーン議員(共和党、テネシー州)は2月6日の本議会の冒頭陳述で、「われわれはこの手続きを軽々しく進めてきたわけではない。マヨルカス長官の行動によってわれわれは手を下さざるを得なくなった」と弾劾の必要性を述べていた(テネシアン2月6日)。

一方で、カリーン・ジャンピエール大統領報道官は、決議案が否決される前の2月6日のプレスブリーフィングで、「下院共和党議員らは、自分たちの仕事をせず、政治的な駆け引きをしている。それは本当に恥ずべきことだ。特に、複数の共和党議員が、『弾劾訴追に値するような犯罪はおかされていない』と言っていることに焦点を当てるべきだ」と述べ、批判していた。同報道官はまた、反対票を投じた共和党の1人であるバック議員が、決議案が審議される前日の5日に議会専門誌「ザ・ヒル」で「弾劾を武器にすることは、憲法と弾劾が持つ重みを損なうとの論説を書いた」とした上で、弾劾訴追を試みた共和党議員らに対し、「同僚の1人がこう言っているのである。(そのため、これについては)話すまでのことでもない」とも述べた。

米国では2023年末から、急激に流入している不法移民が社会問題となっている(2024年1月5日記事参照)。2024年2月4日には、連邦議会上院が、国境を越える不法移民が一定数を超えた場合、大統領が一時的に国境封鎖できる権限などを与える「2024年緊急国家安全保障追加歳出法」案を発表した(2024年2月6日記事参照)。しかし、同法案に含まれていたウクライナ支援予算などに対する反発もあり、2月7日に上院で否決された。

(吉田奈津絵)

(米国)

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