バイデン米大統領の一般教書演説、経済分野の成果PRや、中間層の負担軽減対策が盛り込まれる

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月11日

米国のジョー・バイデン大統領は3月7日に行った一般教書演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、自身の行ってきた経済政策の成果をアピールするとともに、いくつかの新たな取り組みについて提案した(注1)。

経済政策の成果として、まず、「瀬戸際にあった経済を引き継いだが、今や、米国経済は世界の羨望(せんぼう)の的になっている」と述べた上で、次のように具体的な数字を引用して雇用面での成果を強調した。

  1. わずか3年間で1,500万件の新たな雇用を創出した。
  2. 製造業において80万人の新規雇用を創出した。
  3. 失業率は50年ぶりの低さを達成した。
  4. 1,600万人の米国人が中小企業を立ち上げている。
  5. インフレ率は9%から3%まで低下し、世界で最も低い水準となっている。

また、イリノイ州の自動車工場の例を挙げ、「雇用を維持するだけでなく、最先端のバッテリー工場の建設が進み、コミュニティーが再び前進し始めた」として、インフレ削減法(IRA)をはじめとする自身の経済政策の成果をPRした。

その上で、「中産階級がこの国を築き、そして労働組合が中産階級を築いた」「トリクルダウン(注2)の経済を終わらせ、富裕層や大企業が全ての恩恵を独占できなくなる未来を目指す。中産階級がうまくいき、貧しい人がはい上がれるようにし、富裕層がそれでもうまくやっていけるようにすることを決意している」と述べ、バイデノミクスと称される姿勢を今後とも強化していくことを強調した。

具体的には、次のような取り組みを進めていくとした。

  1. 処方箋薬の薬価引き下げや処方箋薬費用の上限設定、医療保険に係る年800ドルの税額控除の恒久化(2023年8月18日記事参照)。
  2. 住宅ローンに係る2年間(月400ドル)の税額控除の創設をはじめとする住宅建設や家賃低減のための計画の推進(2024年3月8日記事参照)。
  3. 教育ローンの負担軽減(2024年2月22日記事参照)や就学前教育の拡充などの教育システムの充実。
  4. 富裕層に対する25%の最低税率設定や最低法人税率の引き上げといった富裕層・大企業への税負担増など、より公平な税制の実現(2023年3月10日記事参照)。
  5. シュリンクフレーション(注3)防止のための法案の制定。
  6. クレジットカードの延滞手数料の32ドルから8ドルへの引き下げに取り組むなど、ジャンク手数料を排除する。

3月11日には2025年度(2024年10月~2025年9月)の予算教書演説が予定されており、一般教書演説で述べられたこれらの措置の一部も盛り込まれるものと思われる。

(注1)一般教書演説は2024年3月8日記事も参照。

(注2)富裕層がさらに富めば、経済活動が活発化し、社会全体に利益が再分配されるという考え。

(注3)商品の価格は変えずに、その内容量をシュリンク(縮小)させ、実質的な値上げを行う行為。

(加藤翔一)

(米国)

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