日米韓の輸出管理連携など議論、米シンクタンク

(米国、日本、韓国、中国)

ニューヨーク発

2024年02月20日

米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)と韓国国際交流財団は2月12日、米国首都ワシントンで、北朝鮮や台湾海峡の情勢、経済安全保障、サプライチェーンなどの共通課題での日米韓3カ国の連携に関するパネルディスカッションを開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

経済安全保障とサプライチェーンのパネルには、元米国商務次官補(輸出管理担当)のケビン・ウルフ氏、韓国対外経済政策研究院(KIEP)経済安全保障チーム長の延元鎬(ヨン・ウォンホ)氏、米国シンクタンクのウィルソン・センター地経学・インド太平洋事業担当ディレクターの後藤志保子氏が登壇し、CSISシニアアドバイザー兼日本部長のクリストファー・ジョンストン氏がモデレーターを務めた。

ジョンストン氏は2023年8月の日米韓3カ国首脳会談(2023年8月22日記事参照)を例示し、経済安全保障分野などでの連携強化が図られているとしつつ、各パネリストに対して3カ国連携で最も重要と考える点を尋ねた。ウルフ氏は、米国が半導体輸出管理の強化(2023年10月18日記事参照)を図るなど、半導体や人工知能(AI)など先端技術の流出は米国の国家安全保障のリスクにつながるとの考えを強く示しているのに対し、日本は半導体製造装置などの限定的な品目に輸出規制を課すにとどまるほか、韓国は政府内で活発に議論が行われているものの、具体的措置に至っていないとして、3カ国間での温度差を課題視した。その上で、日本と韓国が輸出管理に係る法規制を強化することで、共通の安全保障上の目的を持つ国々の中核的なグループになれるはずだと述べた。

ヨン氏は続けて、韓国大統領府が2023年6月に発表した国家安全保障戦略(2023年11月15日付地域・分析レポート参照)に輸出管理と投資審査の強化が示されており、韓国は米国と安全保障の考えを共有していると述べた。一方で、2024年11月の米国大統領選挙の結果によって米国が保護主義的な政策をとれば、敵対国だけでなく、同盟国や有志国にとっても大きな経済的損失となるとして、政治的リスクに懸念を示しつつ、だからこそ、3カ国を含めて共通ルールの議論が行われるインド太平洋経済枠組み(IPEF)が円滑に機能するように3カ国は真剣に取り組む必要があると述べた。また、IPEFについては、サプライチェーン協定で合意に至ったように(2023年11月17日記事参照)、参加14カ国が持続可能な経済成長に向けてその重要性を理解しており、「IPEFの将来を楽観視している」と述べた。

後藤氏も、日米韓3カ国が経済安全保障分野で長い道のりを短期間でともに歩んできたとして、3カ国間でコンセンサスがあると強調した一方、その目標が中国に対しての決定的な勝利を求めるかどうかで、今後3カ国間に隔たりが生じる可能性があると指摘した。さらに、ヨン氏と同様に、日本と韓国は米国の政治的リスクに対する懸念を共有していると述べたほか、実際に日本企業の多くが米中関係の緊張の影響を受けていると指摘し、強化される米国の法規制への対応として、日本企業が調達先の変更や米国への投資拡大によってリスク低減を図っていると説明した。また、日米韓首脳会談で合意した経済的威圧への対抗については、地方政府などを含めたシステミックなアプローチが必要だと述べたほか、難しい挑戦だがIPEFにそうしたアプローチを組みこむことも考慮すべきだとの見解を示した。

(葛西泰介)

(米国、日本、韓国、中国)

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