米商務省が対中半導体輸出管理を改定、産業界は警戒感

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年10月18日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は10月17日、1年前に施行を開始した中国向け半導体関連の輸出管理規則を一部改定する暫定最終規則(IFR)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2022年10月11日記事参照)。官報公示後、30日を経て有効となる。また、60日間のパブリックコメントの募集期間が設けられる。

改定内容に関するBISの解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、改定内容は(1)半導体製造装置関連のIFR(SME)と、(2)特定の先端コンピューティング製品関連のIFR(AC/S)の大きく2つに分かれる。(1)に関しては、輸出管理の対象とする半導体製造装置の種類を拡大、米国人(注1)による中国内の先端半導体施設向けサービスに対する規制内容を精緻化、輸出管理規則(EAR)のカントリー・グループ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「D:5」に指定されている国にも半導体製造装置の輸出に当たって許可申請を要請、といった内容が主な改定のポイントとなる。(2)に関しては、輸出許可申請が必要となるかを判断するための先端半導体のパラメーターの調整、中国以外の国への輸出も管理対象に含むなど追加措置を取ることで迂回リスクへ対処、といった点がポイントとなる。後者については例えば、マカオまたはカントリー・グループで「D:5」に指定の国に本社(または最終的親会社)がある企業に管理対象製品を輸出する場合にも許可申請を求めるほか、カントリー・グループで「D:1」「D:4」「D:5」に指定の国(注2)が輸出先である場合も許可申請を求めるとしている。

BISは加えて、人工知能(AI)半導体開発を手掛ける中国スタートアップの上海壁仞智能科技(ビレン・テクノロジー)およびその関連会社を含む13の中国企業をEAR上のエンティティー・リストに追加した(10月19日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ジーナ・レモンド商務長官は「本日の改定規則はわれわれの輸出管理の効果を強化し、その迂回経路を遮断するもの」との声明を出し、規則改定の背景を説明している。例えば1年前の規則導入以降、AI半導体を扱うエヌビディアは規則に該当する製品よりもわずかに仕様を落とした製品を中国に納入していたが、米国政府高官によると、今回の改定でそれら製品も実質的に対中輸出ができなくなる(CNBCニュース10月17日)。

今回の2つのIFRはそれぞれ、SMEが141ページ、AC/Sが295ページと膨大な内容となっており、米国半導体産業協会(SIA)も「今回の改定が米国の半導体産業に与える影響を精査している」としている。直接的な表現は避けているものの、「過度に広範で米国単独での輸出管理は、海外の顧客が米国以外を向くことを促し、国家安全保障を強化しないまま米国の半導体エコシステムを損なう」と警鐘を鳴らし、政権に対して、外国企業との平等な競争条件確保のために同盟国との連携を強化するよう呼び掛けている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注1)「米国人」には、米国籍・永住権保有者または米国法が保護する個人、米国法に基づきまたは米国の司法権が及ぶ管轄内で設立された法人(外国支所も含む)、米国にいる全て個人・法人が含まれる。中国向け半導体関連の輸出管理規則においては、規則指定の基準に該当する半導体を製造する在中国の施設での開発または生産のために、米国人が製品の輸送を承認、実行、およびそれら製品のメンテナンス、修理、点検、改装などに従事する場合、許可申請が必要となる(2022年11月1日記事参照)。

(注2)ただし、カントリー・グループで「A:5」か「A:6」にも指定されている国は除く。

(磯部真一)

(米国、中国)

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