欧州産業界、欧州委の経済安保政策パッケージを歓迎、企業負担増に懸念
(EU)
ブリュッセル発
2024年02月01日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は1月24日、欧州委員会が同日発表した経済安全保障に関する政策パッケージ(2024年1月29日記事参照)について、2023年6月のEU初の経済安全保障戦略(2023年6月23日記事参照)を明確化するものと歓迎した(プレスリリース)。対内直接投資審査規則の改正案と、二重用途物品の輸出規制(2024年1月29日記事参照)に関し、EUレベルで調整して規制の抜け穴をふさぐことは、経済安保関連リスクの軽減と単一市場の推進にとって極めて重要と指摘。対外投資規制については、制度設計に向けた段階的なアプローチを歓迎する一方、新たな手段を検討する前に、課題の特定やリスク評価、既存の手段のより効率的な活用を行うべきとの考えを示した。さらに、まず必要なデータ収集を行う方針を評価したが、企業に新たな負担が課されてはならないとした。パッケージで提案された措置は企業の投資や欧州の産業競争力に影響を与えるもので、今後の経済安保強化に向けた議論に前向きな姿勢を示した。
欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパは1月24日、同パッケージ発表を受け、経済安保推進には欧州デジタル企業の成長と成長市場、同志国との強力な連携が必要との見解を示した(プレスリリース)。2023年6月の経済安保戦略では、特定されたリスクを軽減するためのアプローチとして、(1)EUの経済基盤と競争力の強化、(2)リスクからの防衛、(3)可能な限り幅広いパートナーとの連携の3つを掲げた。2023年10月には、リスク評価を実施すべき10の重要技術分野を選定し、うち人工知能(AI)、先端半導体、量子とバイオの4分野からリスク評価を行うことを発表した(2023年10月6日記事参照)。デジタルヨーロッパはEU発のグローバルテック企業やユニコーンの育成に取り組みつつ、経済安保の強化を図る上で、今後の法整備に向けた議論で注意すべき点として、次の5項目を挙げた。
- 域外国への技術流出の抑止は重要だが、企業負担が大きい保護的な手段ではなく、欧州デジタル産業の競争力強化と同志国とのデジタル分野での連携強化に焦点を当てる。
- 欧州でのスケールアップを目指す域外企業にとっての参入障壁を減らし、EUレベルで労働者の重要技術関連スキル習得に取り組む。
- EUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」など、EUの研究開発助成金の25%を重要技術関連に充てる。
- 近年成立したデータ法などデジタル関連の規制を簡素化し、適用を進める。
- 経済安保強化に向けたアプローチに「官民連携」を加え、例えば、AIなど4つの重要技術分野の民間の専門家が参加する会議体の設置を検討する。
(滝澤祥子)
(EU)
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