日本発水素ビジネスミッション、西ケープ州で水素研究のケープタウン大学など訪問

(南アフリカ共和国、日本)

ヨハネスブルク発

2024年02月29日

ジェトロの主催で2月12日から16日の間、水素、燃料電池関連企業、メーカーなど30人近い日本企業関係者からなる「南アフリカ水素ビジネスミッション」が実施された。12日から14日は南アフリカ共和国のヨハネスブルクに滞在し(2024年2月27日記事参照)、15日は西ケープ州へ移動して観光貿易投資局(WESGRO)、水素関連の研究に取り組んでいるケープタウン大学、西ケープ州大学を訪問、研究施設を視察した。

WESGROでは、担当者から西ケープ州の水素関連産業の概要や、北ケープ州との水素産業に関する連携について説明があった。WESGROは独自に「西ケープのエネルギー回復力プログラム」を実行中で、国内の電力供給を担う電力公社エスコムによる電力不足を補うため、同州独自で電力不足改善の取り組みを進めている。2023年から2026年にかけて11億ランド(約86億5,700万円、1ランド=約7.87円)の投資を予定しており、新エネルギー発電(ガスや再生可能エネルギー)や市営配電インフラの強化・拡大などが含まれる。水素に関しては、将来的に内需向けグリーン水素の90キロトン(kt)から132ktの製造を目指している。担当者は日本に対して、技術的アドバイス(IPPや自治体の自家発電など)やグリーン水素開発のプロジェクト運営、投融資を期待すると述べた。

写真 WESGRO(ジェトロ撮影)

WESGRO(ジェトロ撮影)

午後はケープタウン大学が拠点のハイサカタリシスと西ケープ州大学のハイサシステムズの研究機関を訪問した。ハイサ(HySA)は、南ア政府が推進する水素社会ロードマップ(2022年2月28日記事参照)をサポートする機関として設置され、その下で前述の2つの機関、ハイサインフラストラクチャー(2024年2月27日記事参照)の3つの研究機関が設置されている。

ハイサカタリシスは、南アの豊富な白金族資源(埋蔵量ベースで世界の75%)を生かし、2014年からPEM型の燃料電池(FC)や電解槽の研究を行っている。「パワー・ツー・リキッド(PtL)」(注1)では、液体炭化水素(含燃料)向けプログラムを開発しており、最初はディーゼルをターゲットにしているが、将来的には「持続可能な航空燃料(SAF)」向けケロシンに移行する予定だ。ハイサカタリシスの研究はハイプラット(HyPlat、注2)を通して2024年以降、さらなる商業化を目指す。

ハイサシステムズは、さまざまなプロトタイプの開発に取り組んでおり、輸送機器向けFCの開発や、直近では高圧水素コンプレッサーなどの実証を行っている研究機関だ。2010年にはFCで稼働する三輪を製造し、FCゴルフカートやコンプレッサー、2016年にはFCフォークリフト、2019年には回転翼航空機(マルチローター)型のドローンも製造した。2018年からは水素の貯蔵タンク製造にも取り組んでいるが、今後はFCの研究開発に特化する考えだ。

写真 (左)ハイサカタルシス、(右)ハイサシステムズ(ジェトロ撮影)

(左)ハイサカタルシス、(右)ハイサシステムズ(ジェトロ撮影)

(注1)再生可能エネルギーを液体燃料や化学物質に変換する概念

(注2)ハイサカタリシスからスピンオフし、燃料電池技術の商業化、製品化に特化した会社

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国、日本)

ビジネス短信 7f8c7901d48cf8fc