「南アフリカ水素ミッション」実施、ヨハネスブルクでは交流会、経済特区など訪問

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2024年02月28日

ジェトロ主催の「南アフリカ水素ビジネスミッション」が2024年2月12日から16日までの間、実施された。30人近い日本企業の関係者は、12~14日には南アフリカ共和国ヨハネスブルクに滞在した。12日は南ア政府関係者やステークホルダーとのネットワーキングがあり、13日はハウテン州成長発展機構(GGDA)やORタンボ経済特区区にあるイソンド・プレシャス・メタルズ(2023年9月22日付地域・分析レポート参照)などを訪問した。

12日に実施したセミナーには、南ア大統領府や科学技術イノベーション省(DSI)、貿易産業競争省(DTIC)、州政府の関係者が参加した。事業紹介のセッションでは、バンビリエナジーとハイブハイドロジェン南アフリカが講演を行った。バンビリエネジーは、燃料電池(FC)から膜電極接合体(MEA)(注1)を製造する企業で、南ア国内での水素製造を目指す。既に鉱山会社大手アングロ・アメリカンに2メガワット(MW)の燃料電池システムを納入し、そのほか南ア政府などと共同で国内のハウテン州、クワズール・ナタール州、リンポポ州をつなぐ水素バレー構築に携わっている。同社は水素バスやトラックの実証実験を準備中で、2025年までにバス20台、トラック3台の実証実験が開催される予定だ。2028年にはバス300台、トラック500台の生産を目標に掲げる。同社CEO(最高経営責任者)のゼネーレ・マブソ・ムバサ氏によれば、本プロジェクトは国内のノウハウや製造設備を使用して実証する考えで、国内に拠点を置く20を超えるステークホルダーが協力を予定している。自動車セクターからはトヨタやダイムラーが想定されている。

ハイブハイドロジェン南アフリカ(2023年12月22日記事参照)は、東ケープ州クーハ特別経済特区(Coega IDZ)内にグリーンアンモニアの製造・輸出拠点を建設中の企業だ。ジェネラルダイレクターのコリン・ルーバー氏は「南アから日本に水素を運搬する場合、スエズ運河などの国際運河を通過する必要がないため、サプライチェーンのリスクヘッジになる」と述べた。

そのほか、燃料電池の開発を行うスタートアップ企業のハイエナ、研究機関のハイサインフラストラクチャーが登壇した。ハイサインフラストラクチャーは、ドミトリー・ベッサラボフ教授を中心に燃料電池、水電解を中心とした研究を行っており、国際共同開発事業「SATREPS」(注2)の枠組みで、日本との共同研究も行う。

写真 開会あいさつを行う大統領府投資インフラ室のマソパ・モシュエシュエ氏(左)とダイレクターのセシル・マソカ氏(右)(ともにジェトロ撮影)

開会あいさつを行う大統領府投資インフラ室のマソパ・モシュエシュエ氏(左)とダイレクターのセシル・マソカ氏(右)(ともにジェトロ撮影)

写真 (左)バンビリエナジーCEOのゼネーレ・マブソ・ムバサ氏、(右)ハイブハイドロジェン南アフリカのコリン・ルーバー氏(ともにジェトロ撮影)

(左)バンビリエナジーCEOのゼネーレ・マブソ・ムバサ氏、(右)ハイブハイドロジェン南アフリカのコリン・ルーバー氏(ともにジェトロ撮影)

写真 (左)ハイサインフラストラクチャーはドミトリー・ベッサラボフ教授、(右)セミナー後のネットワーキングイベントの様子(ともにジェトロ撮影)

(左)ハイサインフラストラクチャーはドミトリー・ベッサラボフ教授、(右)セミナー後のネットワーキングイベントの様子(ともにジェトロ撮影)

(注1)水素イオンは通すが、電子を通さない性質を持つ電解質の膜(電解質膜)や触媒層などから構成される燃料電池の構成材。

(注2)国立研究開発法⼈科学技術振興機構(JST)が所管する、地球規模課題の解決に向けた日本と開発途上国との国際共同研究を推進するプログラムのこと。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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