欧州委の研究機関、2040年GHG排出削減目標案の策定に寄与した分析評価を公表

(EU)

ブリュッセル発

2024年02月21日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は2月9日、欧州委が提案した2040年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標案(2024年2月14日記事参照)の策定に寄与した分析と科学的根拠を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は2月6日、2050年の気候中立に向け、2040年までにGHG排出量を1990年比で90%削減するよう勧告する政策文書を発表。JRCは、経済、エネルギー、環境が相互に与える影響をモデル分析し、欧州委が、2040年目標案が各産業分野や雇用、所得層に与え得る影響評価を行うための材料を提供していた。

JRCによると、気候変動対策は温暖化がもたらす脅威と経済コストを軽減するために不可欠だが、対策には費用が伴うため、必要な支援措置なしには不平等が拡大するリスクがある。他方、カーボンプライシング(炭素価格)からの収入を低所得世帯への支援に活用することで、価格上昇に伴う負担の軽減が可能となるとした。このほか、公正な移行メカニズムや社会気候基金は今後も必要と指摘した。

マクロ経済分析では、2040年までに脱炭素対策を行うことで、有事の際のエネルギー価格高騰の影響は現行の半分にとどまるとした。エネルギーの脱炭素化では、気候中立目標達成にはまだ十分に確立していないクリーン技術の開発、導入と新しい政策が必要だとした。

土地利用・土地利用変化と林業規則(LULUCF、2022年11月15日記事参照)の取り組み強化は、GHG排出量削減に貢献すると指摘。大気、森林など炭素を貯蔵する炭素プール間の炭素移動量(GHGフラックス)をよりリアルタイムで把握し、森林管理を実施する必要があるとした。

気候中立への移行にはさまざまなクリーン技術の開発が求められ、重要原材料の需要は高まる。化石燃料の輸入依存度を下げ、2040年目標案の達成を確実にするために、重要原材料法案(2023年11月17日記事参照)に沿い、強靭(きょうじん)性のあるサプライチェーンを形成し、安定した供給を確保することが必要な点も強調した。

(大中登紀子)

(EU)

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