バイデン米政権の大規模対ロシア制裁、90以上の事業体をエンティティー・リストに追加

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2024年02月26日

米国のバイデン政権は2月23日、ロシアがウクライナへ侵攻してから約2年が経過したことに加え、ロシアの反体制指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡したことを受け、ロシアに対して追加の制裁を発動すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の制裁は省庁横断的かつ大規模に行われた。財務省と国務省が合わせて500以上の個人・事業体を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定し(2024年2月26日記事参照)、商務省は90以上の事業体を輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に追加した。

商務省産業安全保障局(BIS)は、ロシアの防衛産業基盤や戦争継続を支援しているとして、93の事業体をELに追加したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。今回追加された事業体を国別にみると、ロシアが63、トルコが16、中国が8、アラブ首長国連邦(UAE)が4、キルギスが2、インドと韓国が1つずつとなっている(注2)。このうち50以上の事業体は、EARで最も厳しい規制対象の1つとされる、ロシアとベラルーシの軍のエンドユーザーである「脚注3(footnote 3)」に指定された。ELに掲載された事業体へ輸出、再輸出などをする際は、事前にライセンスを取得する必要があるが、ライセンスを申請しても原則不許可となる。BISの発表によれば、ロシアがウクライナへ侵攻して以降、これまでに815の個人や事業体をELに追加しており、今回発表分を合わせると900を超える。

BISはまた、ロシアの防衛産業基盤に重要な製品として、英国やオーストラリアなどとともに2023年9月に特定した、関税分類番号(HSコード)6桁の「共通の高度優先品目リスト」を(2023年10月4日記事参照)、EU、日本、英国と協力して、従来の45品目から50品目に拡大したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。共通の高度優先品目はティア1~4までの4階層に分類されており(ただし、ティア3と4はそれぞれAとBに細分化)、今回追加されたのは、そのうち4.Bに属する8457.10(マシニングセンター)、8458.11(横型の数値制御式の旋盤)、8458.91(横型を除く数値制御式の旋盤)、8459.61(数値制御式のフライス盤)、8466.93(工作機械用部品)の5品目だ。BISは今回追加した理由を、これら工作機械がロシアの戦争継続にとって重要な品目であり、違法に供給されるリスクが高まっているためとしている。

なお、ジョー・バイデン大統領は今回の制裁発表の声明で、連邦下院に対して、「手遅れになる前に」ウクライナを支援するための法案を可決するよう要請している。ウクライナを支援する法案は、国境措置法案などとあわせて上院で可決されていたが、下院では審議が進んでいない(2024年2月6日記事参照)。上院はその後、新たに、ウクライナなどを支援するための法案のみに絞って可決したが、当該法案も下院で審議されるめどは立っていない。

(注1)今回ELに追加された事業体の詳細は官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。2月27日に正式に公示されるが、2月23日から効力を有している。

(注2)複数の国で活動している事業体があるため、追加された事業体の数とは一致しない。

(赤平大寿)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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