米商務省、「ファイブアイズ」5カ国で対ロ輸出管理のガイダンス発表

(米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、ロシア、ベラルーシ)

ニューヨーク発

2023年10月04日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月26日、機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ(Five Eyes)」に米国とともに参加するオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国の当局と合同で、産学を対象にロシア向けの輸出管理で重点的にデューディリジェンスを行うべき品目などを含むガイダンスを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回のガイダンスは、ファイブアイズの5カ国が6月に立ち上げた輸出管理の執行強化に関する枠組み「輸出執行ファイブ(E5)」(2023年6月29日記事参照)に基づく取り組みとなる。E5立ち上げの背景にはそもそも、ウクライナへの侵攻を続けているロシアと、ロシアを支援するベラルーシ向けに強化している輸出管理の迂回(うかい)を防止・抑止したいという問題意識があり、今回の具体的な行動につながったと考えられる。6ページで構成するガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中核は、各国の産学がロシアとベラルーシ向けに輸出などする場合に注意が必要な高度優先品目リストとなっている。リスト作成にはEUと日本を含む友好国とも連携したとしている。リストは関税分類番号(HSコード)6桁で45品目を指定しており、それらを次の4階層に分類している。

ティア1:集積回路(IC)

ティア2:ワイヤレス通信、衛星による無線ナビゲーション、受動素子(注1)など電子部品

ティア3:その他の電子製品、非電子製品

ティア4:電子部品・回路の製造と品質テスト機器

このうち、ティア1と2に分類された9品目が特にロシアの武器システムに重要なもののため、最優先でデューディリジェンスが必要としている。ガイダンスはその上で、輸出管理の迂回への関与が疑われる輸入者の形態を次のとおり特定するとともに、注意点を促している。

〇疑わしい輸入者の形態

  • ロシアのウクライナ侵攻開始の2022年2月24日前までは輸出品を受け取ったことがない企業
  • 2022年2月24日前まではティア1と2に分類された輸出品を受け取ったことがない企業
  • 2022年2月24日前までにティア1と2に分類された輸出品を受け取ったことがあるが、それ以降、受け取りが急増している企業

〇注意点

  • 取引相手の設立年の確認(2022年2月24日以降であるなど)
  • エンドユーザーとエンドユースの確認(それらが取引相手の業態と合致しているかなど)
  • 取引相手の物理的拠点や公開ウェブサイトが危険信号(red flag、注2)に該当するかの確認(住所が住宅である、ウェブサイトが存在しないなど)

米商務省のアラン・エステベス次官はガイダンスについて「米国と同盟・友好国が結束してロシアによる輸出管理の迂回努力を混乱させている新たな証明」とし、輸出管理の実効性を高める上では産学が主要なプレーヤーとの期待を示している。

なお、バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。

(注1)レジスタ、キャパシタ、インダクタなど。

(注2)ガイダンス5~6ページ目では危険信号の類型9つが列挙されている。

(磯部真一)

(米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、ロシア、ベラルーシ)

ビジネス短信 ac9ff33b47804877