WIIW冬季経済予測、中・東欧の経済は成長軌道に回復

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、ドイツ)

ウィーン発

2024年02月08日

ウィーン比較経済研究所(WIIW)は1月30日、中・東欧と西バルカン諸国の冬季経済予測を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。秋季予測(2023年10月19日記事参照)とは対照的に、2024年の予測はやや楽観的なものとなった。同地域のほぼ全ての国で、2023年の実質GDP成長率は停滞したが、2024年には中・東欧EU加盟11カ国の平均が2.5%、西バルカン6カ国は2.6%となる見通しだ。同予測の筆頭著者であるWIIWのリチャード・グリーフソン副所長は「インフレ率の大幅な低下、実質賃金の大幅な上昇、個人消費の持ち直しは、主要政策金利の引き下げとともに成長を軌道に戻すだろう」と述べ、「2024年半ばごろまでにドイツ経済が回復する見通しも、この地域の経済成長回復の重要な要因となる」と指摘した。

中・東欧EU加盟11カ国の2024年のGDP成長率予測2.5%は、ユーロ圏20カ国の平均0.8%を大幅に上回る。これについて、グリーフソン副所長は「中・東欧EU加盟国の経済は正常な状態に戻りつつあり、昨年は滞った西欧との経済収斂(しゅうれん)プロセスが前進するだろう」と述べている。ポーランド(2024年の経済成長率予測:3.0%)とハンガリー(2.3%)は、政治的要因によるEU資金へのアクセスの改善(注)が景気回復を下支えするとみられている。ルーマニア(3.0%)では、インフレの低下が個人消費と投資を拡大させ、クロアチア(2.6%)では、2023年1月のユーロ導入とシェンゲン協定参加(2022年12月12日記事参照)が観光業にプラスの効果を与えるとみられている。一方、ドイツ経済と特に密接につながっているチェコ(1.7%)とスロバキア(1.6%)では、本格的な経済回復は2025年になるとみられる。

ロシア経済は、欧米の制裁に対しての強さを持ち、2023年のGDP成長率は3.5%で、前年のマイナス1.2%から回復した。成長の主な原動力は軍事産業と政府による投資だった。しかし、企業での労働力不足とインフレ率の上昇が深刻化しており、2024年の成長率は1.5%にとどまるとしている。

ウクライナのGDP成長率は、農産物の海上輸出の増加などにより、2023年に5.5%となったが、2024年は米国とEUからの財政援助の継続が予測不可能なことなどから、3.0%と予測されている。

WIIWは中・東欧と西バルカン諸国の経済の重大な下振れリスクとして、ドイツの景気後退の継続、ウクライナやガザ地区での戦争の激化、紅海の物流混乱、米国大統領選挙でのドナルド・トランプ前大統領の当選などを指摘している。

(注)両国は、法の支配の問題を巡り、EUによる新型コロナ禍からの復興基金「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の拠出が凍結されていた。ポーランドは2023年12月の新政権発足により、新EU路線に回帰した(2023年12月20日記事参照)。ハンガリーは、オルバーン・ビクトル首相が、ウクライナとのEU加盟交渉開始やウクライナ支援策でEUに譲歩(2023年12月21日記事2024年2月6日記事参照)。これらを受けて、今後、EU資金へのアクセスを取り戻すとみられている。

(エッカート・デアシュミット)

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、ドイツ)

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