EU理事会、2023年1月からのクロアチアのシェンゲン協定参加を正式決定

(EU、EFTA、クロアチア、ルーマニア、ブルガリア)

ブリュッセル発

2022年12月12日

EU理事会(閣僚理事会)は12月8日、内務相理事会をブリュッセルで開催し、クロアチアのシェンゲン協定(注)への参加を正式に決定した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これにより、陸路と海路については2023年1月1日から、空路についてはフライトの夏ダイヤ開始時期と合わせるかたちで2023年3月26日から、クロアチアとシェンゲン協定参加国間の圏内国境の出入国管理を原則としてそれぞれ廃止する。

また、クロアチアは2023年1月1日から、シェンゲン協定参加国が発給する単一化された短期滞在ビザのシェンゲンビザ(2020年2月4日記事参照)の発給も開始する。最も新しいEU加盟国のクロアチア(2013年に加盟)は、2023年1月からのEU共通通貨ユーロの導入(2022年7月14日記事参照)も決まっており、今回のシェンゲン協定参加により、EUへの統合が一層進むとみられる。

ルーマニアとブルガリアのシェンゲン協定参加は見送り、今後の見通しも立たず

同じくシェンゲン協定参加が議論されているルーマニアとブルガリアについては、シェンゲン協定に参加する一部のEU加盟国が反対したことから、参加に必要な全会一致の賛成が得られず、2023年1月からの参加は見送られた。現地報道では、密輸入業者や不法入国者対策など圏外国境の管理が不十分として、オーストリアがルーマニアとブルガリアの、オランダがブルガリアの協定参加に反対したとしている。ルーマニアとブルガリアを巡っては、欧州委員会は11月16日、クロアチアとともに両国がシェンゲン協定の関連ルールを既に十分に適用しており、協定参加に必要な条件は全て満たしているとして、両国のシェンゲン協定への早期参加の決定をEU理事会に求める政策文書を発表していた(2022年11月25日記事参照)。

EU理事会の開催に先立ち、欧州委のマルガリティス・スキナス副委員長(欧州生活様式推進担当)は、両国はシェンゲン協定の参加条件を満たしているだけでなく、それ以上の取り組みを実施しているとあらためて強調。一部の加盟国からルーマニアとブルガリアの協定参加に反対の声が上がっていることに対して、名指しこそ避けたものの、こうした反対は政治的なものであり、公平でないと暗に批判した。また、EU理事会後の記者会見でも、イルバ・ヨハンソン委員(内務担当)も、一部の加盟国の反対によって両国の協定参加が見送られたことに関して、「失望」を表明。今後も両国の協定参加実現を最優先課題として取り組むとしているが、具体的な見通しは立っていない。

(注)シェンゲン協定参加国は、ブルガリア、クロアチア、キプロス、アイルランド、ルーマニアを除くEU加盟国に、EFTA加盟国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)を加えた26カ国。

(吉沼啓介)

(EU、EFTA、クロアチア、ルーマニア、ブルガリア)

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