ポーランド議会、トゥスク氏を首相に選出、8年ぶりの政権交代

(ポーランド、EU)

ワルシャワ発

2023年12月20日

ポーランド議会は12月11日、2週間前の11月27日に樹立された第3次マテウシュ・モラビエツキ政権(2023年12月5日記事参照)に対し信任投票を行い、賛成190票、反対266票で同政権は不信任となった。同日、下院選で野党勢力を率いたドナルド・トゥスク氏が首相に選出され、9年ぶりに首相の座に返り咲いた(注)。トゥスク新首相は翌12日、議会での所信表明演説ではポーランドの外交活動に比重を置き、親EU路線への回帰を強調したほか、隣国ウクライナへの強力な支援を表明した。所信表明演説後、同首相による内閣の信任投票が行われ、賛成多数で信任された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

12月13日には、アンジェイ・ドゥダ大統領の前で新内閣の就任宣誓式が行われた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(添付資料表参照)。政権交代は2015年以来、8年ぶり。保守政党「法と正義(PiS)」による前政権はEUと対立してきたが、政権交代により、関係がEUとの関係も円滑になるとの期待が高まっている。

新政権が直面する最初の課題

トゥスク首相はまず、EUがポーランドの法の支配の問題を理由に凍結している、新型コロナ禍からの復興基金「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」(2022年6月10日記事参照)の凍結解除を成し遂げると強調した。新内閣発足直後、同首相は12月13日開催のEU・西バルカンサミットへ出席するためブリュッセルに飛び、15日には欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談した。会談後に両者は記者会見を行い、フォン・デア・ライエン委員長はプレス声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。プレス声明では、ポーランドの新政権が司法の独立を積極的に回復しようとしていることを受け、欧州委はポーランドに対し、2023年内に50億ユーロの前払いを行う用意があると表明した。実現すれば、今任期における新政権の最初の大きな成功になると考えられる。

ポーランドメディアは、新政権が最初に取り組むべき課題に、法の支配の回復やRRFの凍結解除のほか、国家予算採択、前政権が介入していたメディアの独立、教員と公務員の給与引き上げ(教員は30%、公務員は20%の引き上げ)などを挙げており(「ポリティカ・インサイト」誌12月12日)、新政権の手腕に注目が集まっている。

(注)トゥスク氏は2007~2014年にポーランド首相、その後2019年までEUの欧州理事会(EU首脳会議)常任議長を務め、親EU派で知られる。

(マルタ・ゴロンカ、柴田紗英)

(ポーランド、EU)

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