2023年の固定資産投資額が44%減、R&D関連の投資は大幅増

(シンガポール)

シンガポール発

2024年02月06日

シンガポール経済開発庁(EDB)は1月30日、同庁が管轄する内外企業による2023年の固定資産投資額(FAI、コミットメントベース)が126億6,000万シンガポール・ドル(約1兆3,926億円、Sドル、1Sドル=約110円)だったと発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。半導体を中心としたエレクトロニクス関連の大型投資を背景に過去最高額だった2022年(225億Sドル)と比較すると、2023年のFAIは43.7%の大幅減だった。一方、EDBが設定する中長期のFAI目標(注1)「80億~100億Sドル」は上回った。

2023年のFAIを分野別にみると、化学分野の投資(45億300万Sドル)が35.6%と最大の割合を占め、次いでエレクトロニクス分野(30億6,000万Sドル)が24.2%を占めた。同年の主な化学分野の投資案件としては、フィンランドのエネルギー会社ネステが5月、シンガポール工場の拡張工事の完成を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(投資額16億ユーロ)。拡張工事により、同社シンガポール工場のバイオ燃料の生産能力は260万トンとなり、このうち最大100万トンが持続可能な航空燃料(SAF)となる。また、三井化学は8月、樹脂改質剤の高機能エラストマーの新たなプラントを着工外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(投資額未公表、2024年度中に完成予定)。国・地域別にみると、米国がFAIの51.6%、次いで欧州が24.8%を占めた。日本の割合は5.4%だった。

一方、2023年のR&D関連のFAIは21億156万Sドルと、前年(14億1,000万Sドル)比で49.0%の大幅増となった。EDBは、2021年5月に導入した新規事業の創出支援プログラム「コーポレート・ベンチャー・ロンチパッド(CVLプログラム、注2、2023年3月6日記事参照)を通じて、これまで大手企業25社の新たな事業の創出を支援したと発表した。このうち15社が人工知能(AI)、データサービス、環境技術、アグリテックの分野だった。

EDBは今後の見通しとして、上掲の中長期のFAI目標を維持する方針を示した。ただ、EDBは、継続する地政学上の緊張や政治、経済の不安定要素、投資競争の激化などにより、「2024年の経営、投資見通しが引き続き厳しいものになる」との見方を示した。同庁は今後、国内の既存産業の強化を図るとともに、グリーンエコノミーやAI、精密医療(Precision Medicine)など、新たな成長が見込まれる分野に注力する方針を示した。

(注1)EDBは2020年から年ごとのFAI見通しを発表するのを停止し、代わりに中・長期のFAI目標額(80億~100億Sドル)を設定している(2020年1月23日記事参照)。

(注2)新規事業の創出支援プログラム「コーポレート・ベンチャー・ロンチパッド」の詳細はEDBのサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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