専門サービス戦略を改定、統括拠点としての地位を引き続き強化

(シンガポール)

シンガポール発

2023年03月06日

シンガポールのガン・キムヨン貿易産業相は2月28日、国会での予算審議で、2025年までの専門サービスの中期目標を示した改定版「産業変革マップ(ITM)」を発表した。ITMを通じて、多国籍企業の地域・国際統括拠点、また法務や会計など専門サービスの集積拠点としてのシンガポールの競争力を強化していく方針をあらためて示した。

ITMは、政労使代表からなる未来経済委員会(2017年設置)の戦略提言を受けて、専門サービスを含む国内23業種についてそれぞれの中期目標を定めたもの(2017年2月17日記事参照)。政府は2022年以降、新型コロナウイルスなど経済界を取り巻く環境変化を受けて、ITMの見直しを進めている。専門サービス部門は、企業の統括本部のほか、コンサルティング、法律、会計サービスなどの提供企業が含まれる。同部門のITMは、貿易産業省管轄下の経済開発庁(EDB)が担当している。

今回の改定ITMでは、(1)多国籍企業の地域・国際統括拠点としての地位強化と、(2)国内専門サービス企業の能力強化を2本柱としている。まず、地域・国際統括拠点としての競争力強化の取り組みの1つとして、EDBは2021年5月に導入した新規事業の創出支援プログラム「コーポレート・ベンチャー・ロンチパッド(CVLプログラム、2021年5月21日記事参照)」を継続していく方針だ。同庁は2022年7月にCVLプログラムに2,000万シンガポール・ドル(約20億2,000万円、Sドル、1Sドル=約101円)を追加支出し、今後2年間で20~30件もの新規事業プロジェクトを支援する計画を明らかにしている。シンガポールには2023年2月時点で、約80のコーポレートベンチャー拠点がある。

また、EDBは国内の専門サービス提供企業の中でも、特に中小企業の労働生産性向上のため、デジタライゼーションを支援していく方針だ。同庁は同ITMを通じて、専門サービスの付加価値総額を2025年までに年3~4%成長させて270億Sドルに拡大し、毎年3,800人の専門・幹部・技術職(PMET)の国民の雇用を創出する目標だとしている。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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