2023年の米年末商戦、売上高は過去最高額も、小幅な伸びにとどまる見通し

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月06日

全米小売業協会(NRF)は11月2日、2023年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比3~4%増の9,573億~9,666億ドルになるとの見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。2023年の年末商戦の小売売上高は過去最高額に達する見込みだが、伸び率は2022年の5.4%を下回り、2019年以降最も小幅な伸びにとどまると見込みで、新型コロナウイルス感染拡大前の10年間の平均(3.6%)に近い水準に戻ると予測している。

ネット販売を含む無店舗小売りは前年同期比7~9%増の2,737億~2,788億ドルと、2022年の2,558億ドルを上回ると予想しているが、伸び率は2022年の9.5%、2021年の11.3%のいずれも下回る見込みとなっている。

同期間の小売業者による臨時雇用者数は34万5,000~45万人になると見込み、2022年の39万1,000人と同様の水準になると予想としている。なお、多くの小売り大手が年末セールを10月に前倒ししているため、同月からの臨時雇用者数も含まれる。

ニューヨーク・タイムズ紙電子版(11月2日)によると、NRFは、学生ローン返済が再開されたことに加えて、借り入れコストが高止まりしていることから消費者信頼感が低下していること、クレジットカード残高が増加していることなど、複数の経済的圧力が年末商戦に向けて消費者を直撃していると指摘した。NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は電話会見で、「消費者に影響を与えている逆風があることは誰もが認識しており、今年最後の数カ月間も逆風がその役割を果たし続けるだろう」として、支出の伸び自体は緩やかになるとの認識を示した。ただし、同氏は「景気の先行き不透明感や家計が直面している課題にもかかわらず、消費部門全体には力強さと回復力が見られる」との見方も示している。また、NRFのチーフエコノミストのジャック・クラインヘンズ氏も「この年末商戦には堅調な雇用と賃金の伸びが寄与するだろうし、消費者はお金を精一杯、効果的に使うために取引や割引を求めるだろう」として一定の期待感も示した。

NRFが実施したアンケート調査(注2)によると、例年どおり、消費者の約半数(43%)は11月前からホリデーショッピングを開始する。高止まりするインフレにより、予算を最大限に活用する方法として、回答者の62%が「ギフトを購入する際に、2023年は前年よりもセールやプロモーションが重要だ」と指摘した。また、回答者の36%は「ホリデー商品の費用を賄うために他の分野で支出を削減する」としているほか、30%は「例年よりもギフトを購入する人数を絞る」などと回答し、消費者の節約志向が強まっている傾向がみられる。ギフトやその他のホリデー商品に対する1人当たりの平均支出予定額は875ドルで、過去5年間の平均(866ドル)とほぼ同水準になっている。購入方法別には、ネット購入が58%と最も多く、百貨店(49%)、ディスカウント店(48%)を利用すると回答した消費者も多かった。

(注1)2021年の年末商戦の小売売上高は8,867億ドル(2022年1月20日記事参照)、2022年は9,363億ドル(2023年1月24日記事参照)。

(注2)調査は2023年10月2~9日に米国の消費者8,103人を対象に行われた。

(樫葉さくら)

(米国)

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